【連載】アリエナイ野外活動ノ教科書~第2回:山で出会う害虫の正体と対策

山で出会う不快な生き物・・・。多少涼しくなっても、季節に応じて不快なムシはなかなか減りません。
うっかり虫が少ないからと虫除けをサボると、日が出てから急に大群に襲われることもあります。
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今回はそんな不快な生き物を個別に少しまとめてみたいと思います。
対策をするにも、まずは敵がどんなものかを知らなければ!というわけです。

※編集部より:以下は害虫について説明になりますが、外観はかなりアレなものが多いのでwikipediaのリンクを貼ってあります。外観や生態が気になる人はそちらをご覧下さい。

●蚊
蚊は、イエカとヤブカくらいの区別は付くかもしれませんが、実は非常に多くの種類がいるもの。衛生害虫の中では都心部では真冬に見かけることさえあります。
刺すのは産卵前のメスだけですが、場所によっては凄まじい数が襲いかかってくることもあり。特に秋から晩秋の蚊はしつこさと凶悪さが倍増しているので注意が必要!
忌避にはディートが有効で、刺された場合は市販のステロイド入りかゆみ止めで十分でしょう。大量に刺された場合は抗アレルギー剤(市販であればレスタミンなど)を飲むと幾分マシになります。
wikipediaリンク「カ」

●ヌカカ・ブヨ
山の水辺で襲いかかってくる害虫で、小バエのようなサイズ+まとわりつくように飛び交います。そして止まるやいなや刺しまくって吸血するというアグレッシブさを備えています。
彼らの特徴は蚊と違って足を使って移動できるという点。蚊の足は止まるためだけに使われ、ほとんど歩くことができません。その点、ヌカカやブヨは止まった後もかなり素早く動けるため、衣類の中や毛髪の中などに入り込んで吸血することもあるという極めて不快な虫なのです。
対策としてディートの類いの忌避剤は非常に有効ですが、水辺で遭遇することが多いことや、ディートを塗布していない頭皮などが狙われることがあるので要注意。
頭に関しては防虫ネットを被り、防虫ネットにもディートをまんべんなく塗っておくのが吉です。
wikipediaリンク「ヌカカ」
wikipediaリンク「ブヨ」

●メマトイ
山を切り開いた住宅地などにも結構出没することで知られる、刺さないのに顔の周りをブンブンと執拗に飛び交う小さなハエです。
何を目的に飛んでいるかというと、目の横にとまって涙などの分泌物を舐めとろうとしているというなんともマニアックな虫です。
刺すわけではないので無害かというと、気持ち悪いだけでなく寄生虫症のベクター(運び屋)でもあるので、特に関西以西の地方の山々では、感染症が多いため特に注意したほうがいい害虫です。
少量のディートにもめげずに顔に寄ってくるため個別の対策が必要です。
特にメントールを忌避する傾向があるので、顔を含む頭にエアサロンパスのようなものをぶっかけておくとかなり忌避させることができるようです。
また小型の殺虫剤を持ち歩き、ある程度たまったら皆殺しにするという荒技を使う人も。
wikipediaリンク「ハエ」

●マダニ
ここで紹介するのはゴマ粒サイズの大型の吸血ダニ。吸血すると小豆大のサイズにまで膨れあがることがあり、また頭部を体内に留置しつつコンクリート様物質で抜けないように固定しているので、一端寄生されてしまうと除去は一筋縄ではいかない不快害虫です。
病原体のベクターでもあり、ライム病や重症熱性血小板減少症(SFTS)など、いずれも極悪な病気を持っていることが知られており、知らないうちに噛まれて感染していたというケースも多いです。
いずれの場合も、メインの症状が出る前に微熱とリンパ節の酷い腫れが起こるのが特徴なので、山から帰って1週間ほどの潜伏期間を超えてから謎の体調不良が発生したり、リンパ節が腫れた場合は病院でその旨を告げて調べてもらった方がよいでしょう。
忌避にはディートが有効ですが、這い回って移動できるので塗っていない場所に取り付くこともあります。シカが多いエリアには大量にいることがあるので、事前に対策しておく必要があります。
wikipediaリンク「マダニ」

●ツツガムシ
マダニは大型の吸血ダニなので目視で確認できますが、こちらは塵ほどのサイズなので山ではまず目視不可能という害虫。日本には120種ほどのツツガムシがいますが、その中でも人を刺して病気を引き起こすのは3種類。
春と夏から晩秋と涼しい時期に被害が増加するのは、涼しく快適な季節でもあるので山登りの服装も軽装になる人が多いためです。
衣類にまず取り付いてから上ってきて刺すことが多く、衣類に特に重点的に忌避剤を付けておくのが最適な対策です。
また、山で着用した衣類はビニール袋に入れてから殺虫剤を噴霧し、家にそのまま持ち込まないようにすることも大切。
ツツガムシが媒介するツツガムシ病の潜伏期間は数日~10日。刺された部分が壊死し、その回りに発疹が大量に現れるのが特徴なので、もしそういう症状が出たら速やかに病院へ!
wikipediaリンク「ツツガムシ」

●ハネカクシ
大きくても1cm程度の小さな虫で、羽を小さく小さく折りたたんで豆粒のように隠しているのでハネカクシという名前で呼ばれています。
地域によってはヤケド虫といわれるように触ると分泌液を噴射し、これに含まれているカンタリジンによって、酷いびらん性の炎症を引き起こしてしまいます。
明かりに向かって大量に飛来することもあるので、夜間のキャンプでは特に注意が必要になります。
もともと人間に寄ってくるタイプの昆虫ではないので忌避剤はあまり効果がなく、キャンプ地ではエリア殺虫剤を用いるか蚊取線香を置いておくと比較的被害に遭いにくくなります。そしてもし大量にいた場合はその場から避難することも考えておきましょう。
wikipediaリンク「ハネカクシ」

●ヒル
地上では尺取り虫のように移動して体に這い上がってきたり靴に忍び込んで吸血することで知られる「不快 of the 不快」の名を欲しいままにしている害虫。害虫といっても当然虫ではなく、ミミズなどと同じ環形動物の一種で、山の上から海底まで全世界に広く分布しています。
山で出会うのはヤマビルの仲間で、地域によっては凄まじい密度で生息しているため、うっかり踏み込むとヒドイ目に遭うことも。ヤマビルは湿度が60%以上ないと動かない反面、低温には比較的強いので、朝露の降りた山などで特に被害が多いように思われます。
淡水中ではチスイビル、さらに地域限定ですが渓流地にはハナヒルという、飲料水から体内に入り込んで咽頭や鼻孔に寄生して延々と血を吸って成長し続けるという恐ろしい種類もいます。渓流なのでチスイビルがいないはず!と無警戒なのは考え物。
対策としてはヤマビルにはディートがよく効きます。加えてメントールにも忌避性を示すので、体にはエアサロンパスのようなハッカオイルの含んだものを塗布しておくと入り込んだヒルの被害を減らせます。靴やカバンにはウルトラソンのような強力な忌避剤を塗っておくといいでしょう。
ただし不気味で不快なだけで、病気などの媒介はないようです。
wikipediaリンク「ヒル」

今回は山などで遭遇する可能性の高い害虫を紹介しましたが、完全駆除が難しい種類も多く、屋外にあるサバゲフィールドでももしかしたら遭遇するかもしれません。
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特に春~秋は害虫も活動が活発になりがちなので、虫除けに関しては常に意識しておいた方がいいでしょう。

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くられ

生化学をメインとするサイエンスライター。毒と煙が大好きなマッドサイエンティスト。近著は不謹慎教科書の新作「アリエナイ理科ノ実験室2(三才ブックス)」。別名義では真面目に教育関連をやっていたりやってなかったり。メールマガジン(アリエナイ科学メルマ)も好評配信中。

投稿者記事

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