突然ですが私イヌイは映画やアニメに登場するオリジナルの銃器類が大好きです。
とはいえ、オリジナルなら何でもいいわけではなく、リアルさというか「いかにもありそう!」な存在感があるかどうかがポイント。そんな中でもSF映画『ブレードランナー』に登場するブラスター、通称「デッカードブラスター」は特に強い思い入れがあります。
過去にアドベンのキャストモデルや高木式(無可動の方)などを入手していますが、あくまでカタチだけのものでした。
今回紹介する「留之助ブラスター」は、レプリカプロップとして最高峰のもので、飛騨高山の留之助商店から限定でリリースされている製品。
BB弾の発射機能やキャップ火薬による発火機能のないディスプレイモデルですが、その完成度は「究極のレベル」と高い評価があります(製造はマルシン工業)。
今回筆者が入手したのは「留之助ブラスターPRO リテイラーエディション」の第三次ロットで、完成品ではなく組み立てキットの方。
価格は47,500円でした。
完成品もありますが、無塗装状態のレシーバーやシリンダーカバーなどを自力でカッコよく仕上げるべくキットを選んだわけです。
というわけで、留之助ブラスターPROの製作リポートと完成品の紹介をします。
高額なキットでなおかつ上級者向けではありますが、思い入れの強い分、写真山盛りで紹介します。お好きな人もよく分からないという人も、ぜひご覧下さい!
内容物
パッケージを開けるとこんな感じ。
芯となるリボルバーは44SPL×5連発のチャーターアームズ・ブルドッグ、上部に乗るレシーバーとバレル下部に増設されたマガジン部はボルトアクションライフルであるシュタイヤー・SSGのものです。
その下には小分けされたパーツやネジ・スプリング類が入っていました。
さっそく中身を取り出してみましょう。
まずはブルドッグの構成パーツ。
延長されたブルバレル一体のフレームやシリンダーはHW樹脂。別体のグリップ部は亜鉛ダイキャスト製です。
44口径とはいえかなり小型のリボルバーです。
シュタイヤー・SSGレシーバー部
レシーバーやボルト、フロントキャップなどはすべて亜鉛ダイキャスト製。
表面はざっと仕上げられていますが、キレイに作りたいのならさらなる磨きや塗装はとても重要になってきます。
なお、完成モデルではここは黒染め+焼付塗装になっているようです。
シュタイヤーSSGマガジン部
バレル下部につくユニットはSSGのマガジンの部分。内部には側面と底面にある赤LEDの電飾ユニットが収まっています。
ここは実物プロップでも無塗装の樹脂の状態なので今回はあえて何もしない予定です。
上記の大物パーツをざっと重ねてみると・・・
ピシっと組み合わさり、あちこち盛ったり削ったり・・・という手間はかかりません。さすがマルシン製。
しかし、こう見るとハーフシルバーで仕上げるのもちょっとよさそうですね。
付属のネジ類など。
紛失しないよう1カ所にまとめておきましょう。
ボタンネジは「ミリ規格のもの」と「インチ規格のもの」があるので要注意。使用する六角レンチは同梱されているので問題ありません。
ここまで大まかな構造を理解したら、まずは各パーツの塗装と仕上げから行いましょう。
表面仕上げ+塗装
まず最初はブルドッグフレームから。使用するのはスポンジヤスリ。写真の600~800番相当の「ウルトラファイン」をメインとして、全体を磨いてひと皮むきましょう。
ほとんどありませんでしたが、ヒケやパーティングラインも同時に処理しておきます。
磨きキズが出ないように磨き、あらかたできたら中性洗剤で水洗い。水分が乾いたらプライマーを使わずインディの「ダークパーカー」をダイレクトにスプレーしました。
亜鉛製のグリップ部は組み上げると外から見えない部分なので、同じく下塗りなしでダークパーカーを吹きました。ダークパーカーは密着力が強いので、脱脂ができていればそこそこ強度のある塗膜になります。
あっという間に乾燥しますが、余裕を持って放置してからウェスで磨きました。
ほんのちょっとコンパウンドをつけて磨くと、マットな表面が鈍い金属光沢に変化していきます。
ブルドッグフレームの処理はとりあえずこれで完了。
続いて塗装するメタルパーツ。
左右シリンダーカバーは亜鉛製、グリップフレームとペン状のレーザーサイトはアルミ製。ここはすべてツヤありの黒(グロスブラック)に仕上げます。
まずは表面の磨きから。
グロス仕上げは下地の平滑さがモロに出るため、徹底的に磨き込みましょう。
今回は600~800番、1000~1200番、2000番という3種類のスポンジヤスリで磨きました。完全な鏡面にしてしまうと塗料の食いつきがよくないかも?と考えてこの仕上げにしたわけです。
メタルプライマーやミッチャクロンで下地を塗り、その上にグロスブラックのラッカー系スプレーを吹きました。
余裕があれば乾燥後にコンパウンドで磨き、ウレタンクリアーを吹いてもいいでしょう。
今回はラッカー系のグロスブラックを4層で仕上げています。
グリップエンドの底面はグロスブラックで仕上げましたが、実物プロップではフラットブラックが正しいようです。そのうち直すかも。
さて、今回最も注力すべきシュタイヤーSSGのレシーバー部を仕上げます。
ここは今回はブルーイング処理してみました。
ブルーイングとは人工的に黒サビの皮膜を作る作業で、コルトSAAやオールド1911などでおなじみの、金属感のあるツルツルな青黒い表面のことです。
ブルーイングは表面の平滑さが仕上がりを大きく左右するので、徹底的に磨き込みましょう。
まずはリューター+回転バフ(中目)で全体をひと皮むきます。成形時の湯ジワやザラッと荒れた部分はこの段階で可能な限りなめらかにしておきます。
その後、スポンジヤスリで死ぬほど磨きました(根性の空研ぎです)。このレシーバーカバーだけで600~800番のスポンジヤスリを4枚使いました。
その後はスポンジヤスリの2000番を使って仕上げ、さらに細目のコンパウンドで磨き込んでいきます。
とりあえず鏡面加工にするつもりで徹底的い磨きました。
なお、この作業から、手の油分の付着を防ぐため、ゴム手袋を着用しておきましょう。
写真は医療用のニトリル手袋。100枚入りで2000円程度です。
磨き終わったら手袋をしたまま中性洗剤とスポンジでパーツをよーく洗って下さい。刻印の中に入り込んだコンパウンドは柔らかい歯ブラシで掻き出しましょう。
ブルーイングにはバーチウッドの「スーパーブルー」と「アルミニウムブラック」を使用。
一般的に鉄にはスーパーブルーを、亜鉛やHW樹脂にはアルミニウムブラックが適しているとされています。今回はスーパーブルーとアルミニウムブラックを1:1で混ぜたものを使用しました。もしブルーイングに慣れていない場合は、濃く染まりやすいアルミニウムブラックだけでも問題ありません。
なお、ブルー液は劇薬なので必ず手袋を着用して作業して下さい。
今回は擦り込みで染めるので、ブルー液は化粧用のコットンに染み込ませて塗ります。
コットンは常に汚れていない面でこするので大量に使用します。100均などで大きめのパックを買っておくといいでしょう。ティッシュはすぐボロボロになるのでブルーイングには向いていません。
中性洗剤で洗って完全に脱脂したレシーバーに原液のままのブルー液を・・・
最初はこすらずサッと塗るだけ。
一瞬で茶色っぽく変色します。
塗って変色したらすぐ、ブルー液が乾かないうちに水道で洗い流します。ゴシゴシこすらず水圧で流す感じでOK。
軽く水分を拭き取ったら30分ほど自然乾燥させて落ち着かせます。
水分が乾いたら表面の一部が粉を吹いたように厚くなっているはず。
そこで今回の方法のキモがこれ! 研磨パッドかスチールウールで表面を拭き取ります。
一方通行で力を入れず、軽く当てたスチールウールやパッドで表面だけ撫でるようにぬぐうのがポイントです。
そのまますぐ、再びブルー液を塗りましょう。
2回めは1回めと同様に「塗る」だけ、ただし3回め以降は「塗る」のではなく「ゴシゴシと擦り込む」ようにします。
乾燥して厚くススのようになった部分をこするとカサブタのようにハゲてしまうので、常にキレイなコットンで均一に擦り込み、全体が濡れた状態をキープするのがコツです。
擦り込んだら再び水洗いを行い、乾燥したらスチールウールで拭うという作業を繰り返しましょう。
上記の「擦り込み→水洗い→乾燥→磨き」までを1セットとし、今回は8セット繰り返しました。8回染めた直後の状態はこんな感じ。
この時点では茶色っぽいザラッとした表面ですが、よく見ると深い色合いが再現されています。
ブルー液を擦り込んでも弾くようになれば充分染まったといわれています。
今回はその一歩手前で止めたので、もう数回塗り込んでも良かったかもしれません。
ここでブルー液の反応を完全に止めるのと表面保護のため、オイルを塗ります。
筆者は虹色の皮膜が好みなのでCRC556をドバっと吹きかけました。
使うオイルの種類はいろいろあるらしく、テフロンオイルでもエンジンオイルでも油分であればとりあえずOKといわれています。キャロムのガンブルーシリコンも定評がありますね。さすがにグリスはダメだと思いますが。
オイルびたびたの状態で半日ほど放置したらコンパウンドで磨きましょう。
細目~極細目をファイバークロス(100均のメガネ拭きクロス)を使って磨き込んでいきます。
今回は使い込んだイメージで仕上げるつもりなので、エッジ部が薄くなってシルバーが(ちょっとだけ)出るように磨きました。
ここでリューターのフェルトバフを使うと削り過ぎて台ナシになることが多いので、面倒でも手作業でシコシコと磨いて下さい。
数時間かけて手首が腱鞘炎になるほど磨いたらイイ色合いになってきました!
作業中はこまめにファイバークロスで全体を拭って、色合いや磨き具合をチェックしましょう。
平滑な表面ながら、金属地肌の微妙な色合いのムラとツヤ加減がわかりますか?(ちょっと指紋がついていてスイマセン)
今回はアルミニウムブラックをメインに使ったのでガンメタ調ですが、スーパーブルーで仕上げるとやや青みがかったガンブルーになります。ただ、スーパーブルーでの処理はアルミニウムブラックより難易度が上がるので、初心者にはオススメしにくいところ。
コンパウンドで満足のいく表面ができたら、改めてオイルを薄く塗り込んでおきましょう。
レシーバーから見えるボルト部分には磨いたアルミニウムブラックの皮膜の上にクリアブルーを薄くスプレーしました。
ほんのり薄い塗膜にしておくと、ブルーイング部分との差がなく、一体感ある仕上がりになります。
亜鉛製のトリガーガードはスーパーブルーを使って染めました。
写真は擦り込み方式で3回染めた直後の状態。
この後は細目~極細目のコンパウンドで仕上げていきます。内側や側面も忘れずに磨きましょう。
小物パーツもしっかりと処理しましょう。
全体をスポンジヤスリで軽くひと皮剥き、3倍に希釈したアルミニウムブラックの溶液にドブ漬けで染めました。10~20秒ほど漬けたら引き上げて水洗い→乾燥→ウェスで磨くという作業を3回繰り返しています。
最後にオイル(CRC556)をウェスで刷り込んでおきましょう。
小物パーツまで処理が終わったら全体の組み上げに入ります!
組み立て
日本語と英語が併記されたマニュアルはビジュアル的には分かりやすいですが、ネジやピンの種類を迷いがち。
なので、手元にノギスを用意しておくのがオススメです。
面倒でも1本ずつ長さを計り、マニュアルの数値と対照させて組んでいきましょう。
ブルドッグフレームの組み立ては一般的なモデルガンと同様。
トリガー回りの装着でちょっと苦戦するかもしれませんが、実銃通りの機構と考えれば自ずと答えは出るはず。ごく一般的なダブルアクションリボルバーですね。
レシーバー関連は特に問題ないでしょう。
ボルトの可動もできます・・・が、ボルトハンドルのストッパーがないのでプラプラしてしまいます。
応急処置としてボルト後端のスリーブに入り込む部分にテープを巻いて抵抗にしました。薄くミゾを掘ってOリングをかませてもいいかもしれません。
そのレシーバーをブルドッグフレームに乗せたところ。
フレーム後端部に引っ掛けて、先端左右のキャップボルトで固定します。
この後、シリンダーやシリンダーカバー、マガジン部を取り付けましょう。
グリップフレームはブルドッグのグリップ部を完全に覆うようになっています。
矢印の3本のネジで固定されますが、完成するとこの部分がギシギシいうことがあります。それぞれバランスよく締め込んで、ちょうどいい状態に調整しましょう。
最後にデッカードブラスターの特徴であるグリップを装着。
クリアキャストで成形された通称「琥珀グリップ」は厚みがあっていい雰囲気。反りもないのでそのまま片側2本のネジで固定できるはずです。
ややマット調なので気になる人はクリアでコートするといいかもしれません。
プロップにより近づけたい人は、チェッカリングにダークイエローをスミ入れしましょう。
はい、これで完成!
SSGレシーバー部:ブルーイング
シリンダーカバー:グロスブラック塗装
SSGマガジン部:無塗装の樹脂
ブルドッグフレーム・バレル:ダークパーカー塗装
トリガー・トリガーガード:ブルーイング
このように質感の差を表現してみました。
オリジナルのプロップも異素材感がかなりあるので、ある意味「リアルな仕上がり」だと思いますがいかがでしょうか。
このブルーイングに飽きたらセラコートをかけてもらうのもいいかなーと考えています。
ちなみにブラスターのサイズ感はこのような感じ。
全長は5~6インチバレルのリボルバー程度ですが、上部のレシーバーと下部のマガジンによって上下のボリュームがマシマシになっています。
ちなみに留之助ブラスターは非常に重く、完成時の重量は1,200g!
まぁ、そりゃ亜鉛合金のレシーバーがHW樹脂のリボルバーに乗っているわけなので・・・。
シリンダーラッチの操作でスイングアウトが可能。
レーザーサイトのついたシリンダーカバーはヨーク(クレーン)に取り付けられており、カバーごとスイングアウトします。シリンダーは外からは後端部がわずかに見えるだけです。
同梱されているダミーカート
ブラスターなので実包を使うのか分かりませんが、ブルドッグ用ということで珍しい44SPL(44スペシャル)のダミーカートリッジが付属します。
アルミ調の弾頭がちょっと目新しいですね。
5連発の細いシリンダーにカートが詰まった密集感がたまりません!
なお、ダミーカートを装填すると総重量は1,350g!にもなります。
シュタイヤーSSGのボルトは、ハンドルを起こすと15mmほど後退可能。
劇中でここを動かすシーンは一切ありませんが、せっかくボルトアクションライフルのSSGなので可動するだけでうれしいです。
マガジン部にはLEDの電源と発光ユニットが収まっています。
側面の小型スイッチをONにすると・・・
一瞬の間があってから、5か所の赤色LEDがボワっと光ります。
すぐに最大輝度で点灯するのではなく、ちょっと雰囲気のある演出ですね。
完成後もマメにオイル(CRC556)を塗りつけているため、レシーバーは独特の色合いになってきました。
塗装ではなかなか表現できないので、苦労してブルーイングしたかいがありました。
チラッと見えるボルトの薄いブルーもいい感じにマッチしています。
もしもう1丁作る機会があれば、今度はレシーバーを真っ青なガンブルーで仕上げてみたいですね!
ちなみに、スーパーブルーの擦り込み→研磨→オイルで仕上げたトリガーガードはこのようになっています。
今回は薄く染めましたが、亜鉛合金でも下地をしっかり整えるとガンブルーの発色は可能ということが分かります。
発火はできませんが動作は可能。
前方のトリガーはダミーで、後方のトリガーを引くとシリンダーが回ってハンマーダウンというリボルバーのダブルアクションが楽しめます。
動作はチキッ!チキッ!と小気味よい印象。特に内部にグリスを塗らなくても大丈夫っぽいです。
しかし、フルロードで1.3kgという重さはハンパないですw
SFプロップファンには「夢の銃」であるデッカードブラスターが、高いとはいえこの完成度の製品を買えるのはありがたいところ。ちょっと前まで無可動モデルが10万円とかしていましたから・・・。
なお、留之助ブラスターPROには完成品もあります(価格は80,000円)。
オマケ
付属のマニュアルの後半4Pは、実物プロップの高精細写真を掲載。2006年のLAコンで撮影された写真でしょうか。ハリソン・フォードが撮影で使用した「ヒーロープロップ」の詳細がよく分かります。
なお、この実物プロップは2009年にアメリカでオークションに出品され、2,000万円以上の金額で落札されたそうです!
というわけで、苦労しながらもそれなりのカタチでブラスターが完成しました。
このキットは表面仕上げがある時点で初心者向きではありませんが、モデルガンやエアガンのカスタムや塗装をしている人にとっては興味深い製品ではないでしょうか。
筆者も完成品には目もくれず、ブルーイング前提でキットを購入し、ほぼ予想通りの仕上がりになったので非常に満足しています。
留之助ブラスターは少数のロットで製造される限定生産品で、この第三次ロットはわずかに在庫があるのみ(記事執筆時点で)。売り切れたら入手できません。
しかし、遠からず第四次ロットがリリースされる可能性もあり、今回こうして記事で取り上げてみました。
各部の完成度はいうまでもなくパーフェクトといえるレベルなので、あの「デッカードブラスター」が欲しい!という人にとっては最高峰の製品です。
憧れのデッカードブラスター、今こそいかがですか?
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