ゴアテックスやeVentといった透湿繊維が多用されるアウトドアウェア。
新品時は「めちゃくちゃ水弾く!」「全然汚れない!」など優れた性能を発揮しますが、しばらく使っていると撥水性や透湿性が目に見えて低下してきます。
その原因の多くは「汚れ」といわれており、適切なメンテナンス(クリーニングや撥水処理)によって、新品時の性能を取り戻すことができるのです。
そこで今回はアウトドアウェア専門のクリーニングを行う「洗匠屋」さんにウェアをお願いし、その作業の様子をまとめてみました。
なお、依頼の流れは「webから申し込みを行う」→「依頼品を発送する」→「検品・クリーニング作業」→「チェック後に返送」という流れになり、通常は3~6週間ほどかかります。
今回サンプルとしてお願いしたのはWildThings Tacticalのハードシェル上下。
素材は透湿性の高いeVent製で、年2~3回ほどの頻度で登山などに数年間使用したもの。
見た目は全然汚れていませんが、撥水性はやや低下していました。
まずは「部分洗い」。
汚れいている場所や、よく汚れる場所(ソデ・エリ)に対して専用洗剤を使います。
ウェアが傷つかないように汚れを浮かし、スポンジで部分的に洗いきます。何気なく洗っているようですが、職人ワザが必要な繊細な工程です。
なお、今回のウェアですすぎ前後で水の色がこんなに違いました。
上がすすぎ後、下がその前の状態。やはりかなり汚れていたようです。
続いて「浸け込み」。
部分洗いの後、水と専用洗剤で全体の汚れを優しく洗浄します。
透湿素材であるメンブレン(生地)が水蒸気を放出しようとしても、表面に汚れがあるとそこでブロックしてしまいます。つまり、透湿生地には汚れは厳禁です。
ここでいったん「加工前乾燥」。
乾かないと分からない汚れもあるため、ここで汚れのチェックをします。
この段階で汚れ・シミがあれば再度処理をやり直すのだとか。
商品の状態が悪い場合(劣化や耐久性)によっては、汚れを落としきれない場合があるそうですが、ここでチェックをしてOKであれば、撥水加工に入ります。
重要な「撥水加工」と「乾燥」。
撥水性能が落ちて表面が濡れると、やはり水蒸気の放出を妨げてしまいます。そこで撥水性能を復活させるため、撥水加工剤(特殊専用溶剤)に漬け込みを行います。
そして特殊な機械でウェアへの負担を最小限に抑えながら定着。
特殊なハンガーでフードまでラインが崩れないように注意して自然乾燥させます。
最後にひと手間、「仕上げ」。
手仕上げでウェア全体に熱を加えます。
帯電防止や抗菌効果もあるそうなので、また使うのが楽しみになりますね。
これでクリーニング作業は完了!
さて、作業前後で撥水性能を比較してみました。
まずこれは加工前。
一応、撥水はしていますがどことなく頼りない様子。
そしてこれが加工後。
もう水滴の角度からして違います! ちょっと傾けるとコロコロと・・・
汚れも落ちて、撥水性も完全回復です。
いや、新品時よりも撥水しているような・・・?
最後に、洗匠屋さんからのメッセージを。
雨や汗で濡れて体を冷やしてしまうと、たとえ標高の低い山であっても低体温症などの事故につながる可能性があります。登山中には雨だけではなく、風や寒さなどを防ぐ目的でもハードシェル・レインウェアを着ることがあり、ハードシェル・レインウェアはまさに「命を守る大切な装備」。
汚れて機能を十分に発揮されてなければ蒸れやすくなり体力を消耗してしまいます。だからこそウェアなどの汚れを落とし、撥水を施すことが命を守ることにもなります。
せっかく高機能なアウトドアウェアがあるのならば、シーズンオフの夏の間にしっかりプロの手でメンテナンスして、その性能を取り戻してみてはいかがでしょうか。
取材協力:洗匠屋
参考価格
ハードシェルジャケット 3,780~4,860円
ハードシェル パンツ 3,780~4,860円
ソフトシェル ジャケット 2,700円
ダウンジャケット 3,240円
フリースジャケット 1,620円
トレッキング パンツ 1,620円
ザック 3,240円
※上記価格はすべて税込みです。
[amazonjs asin=”4635924149″ locale=”JP” title=”登山用具2014 基礎知識と選び方&2014最新カタログ (別冊 山と溪谷)”]