こんにちは、アヤベです。夏休みのサバゲの計画は立てていますか?
自衛隊は、その任務の特性上、用意周到な組織です。いかなる不測の事態にも対応できるよう、ありとあらゆる可能性を想定して、そのために日々訓練をしています。
有事に備える場合はもちろんですが、平時でも用意周到。とにかく、何でも計画を立てます。イベントを開催するときなど、早ければ1年も前から委員会を立ち上げて会議を重ねます。
イベントは、立案からプログラムづくりまで、隊員が手作りで行います。当日の作業のみならず、準備や撤収のために基地の所属部隊から、それぞれ作業人員の差し出しもお願いしないといけません。通常業務に支障が出てはいけないので、綿密な調整が必要なんです。とはいえ、隊員も人間ですから、たまに計算を間違ってしまうこともあります。
航空自衛隊の、とある基地での航空祭でのこと。
飛行場のある基地は、展示飛行なども行われますから、多くのファンが詰めかけます。その基地では、今回から展示の規模や日程を大幅に変えたので、作業内容に前例がないものが多く、全てが手探りの状態でした。実行委員会の一人、S3佐は、こういうイベントの実行委員に任命されるのは初めて。もしものときに備えてと用意周到すぎる計画を立ててしまったのです。
どこを用意周到にしすぎてしまったかというと、人員の確保。自衛官は、24時間常に待機状態でいることを求められています。なので、ちょっと人聞きの悪い言い方をすれば、人員だけはタダで使い放題。ですので、ちょっと多いかな? くらいの人員を集めるのは普通のことなのですが、普段から心配性なところがあるS3佐、今回はちょっとやりすぎました。
まず、警備要員を大量に確保しすぎてしまいました。警備員が多すぎて、全員が並ぶと5メートルごとにポールのように隊員が立っているという、不気味な光景です。訪れる人たちの怪訝な視線にさらされて、きまりが悪そうにたたずむ隊員たち。
現場の指揮官から、これはさすがに多すぎだとのクレームが入りました。そこで、午後からは半数が任務を切り上げて解散となり、職場待機という名目で、暇を潰すことになりました。
続いて確保しすぎてしまったのは、来賓のための案内係。ここは、来賓1名に対して案内係がSPのように4名もつく計算に。さすがに、これは来賓の方をビビらせてしまうと、すぐさまほとんどが解散して職場待機となりました。でも、彼らは喜んだんですよ。ちょっと行っただけで代休がついたわけですからね。
でも、S3佐は真っ青です。せっかく、所属部隊に無理をお願いしてたくさんの隊員に集まってもらったのにと、落ち込んでいます。それでも、足りないよりはマシだし、来年のイベントのときに活かせるから、と皆に慰められたのでありました。
自衛隊は、こと人員に関しては「不足する」ような計画の立て方をすることはありません。「無駄だなあ、要領が悪いなあ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、この組織は、不足が命取りになることがあるのです。有事だから、イベントだからと切り分けろというのはちょっと酷というもの。それに、人数が多ければ作業は必ず時間内に終わりますし、雑になるということは絶対にないんですよ!
イラスト:モノ
◀︎◀︎◀︎次の回を読む:【連載】もと女性自衛官アヤベの「ここだけの話」その12~暇さえあればPKO
▶▶▶前の回を読む:【連載】もと女性自衛官アヤベの「ここだけの話」その10~天を突き上げるこの拳! でも怒ってるわけじゃないんです!
[amazonjs asin=”4862019382″ locale=”JP” title=”陸・海・空 自衛隊最新装備2015 (メディアックスMOOK)”]