【連載】もと女性自衛官アヤベの「ここだけの話」その6~まだまだこだわる! 続いて足元!

※本記事は過去記事の内容を基に校正しています

こんにちは、アヤベです。

先日、自衛官の「こだわりのアイロンがけ」についてお話したばかりですが、陸・海・空を問わず、入隊直後に教わって、退職するまでずっとやり続けることが、アイロンがけのほかにもうひとつあるんですよ。

それは「靴磨き」

これだけは断言します! 靴墨とブラシを持っていない自衛官は絶対にいません!――たぶん。
失くしてしまって、人に借りてばかりの横着モノもいるかもしれませんが、その隊員だって、入隊時は私物の靴磨きセットを持っていたはずです。

自衛官には「品位を保つ義務」というものが自衛隊法第58条で定められていますから、シワだらけの制服や作業服と同様、泥だらけになったりくすんだりした靴も、大げさに言えば「法律違反」なのです。

貸与される靴は、幕や部隊によって様々。
たとえば、航空自衛隊のオーソドックスな装備は、制服時に着用する「短靴(たんか)」、作業服装時に着用する「1種編上靴(へんじょうか)」、1種編上靴よりちょっと長い「2種編上靴」の3種類。アヤベが在職時は、「2種編上靴」は貸与されていませんでした。

この靴磨きにも、これまた、靴の種類によって下準備のこだわりがあるのです。

まず、制服着用時に履く、「短靴」。こちらは、スーツに合わせる革靴と同じスタイル。もともとツヤツヤしていて表面が滑らかなので、普通に――といっても、普通の人よりは熱心に――靴墨をつけてブラシで磨くだけで大丈夫です。

ワンタッチの塗る靴墨を使う横着モノもいます。これ、塗ったときはピカピカなんですが、長い間使い続けていると、革の表面が傷んでボロボロになってしまうんですよね。こうなると、もう修復不可能、法律違反です。アウトーッ!

ちなみに、女性隊員の短靴は、ローヒールのパンプス。教育隊のとき、彼女たちはこの短靴を履いて行進しまくるため、足の甲が日焼けして「チーズ蒸しケーキ」みたいになります。

続いて、作業服着用時に履く、「編上靴」。こちらは、いわば安全靴です。表面がちょっとボコボコしているので、そのまま磨いてもすぐにはピカピカにならず、鈍い輝き。この光らせ方にこだわりがあるんですよ!

まず、ひとつ目。
表面のボコボコを、なんと、物理的にアイロンで潰してフラットにしてしまうのです!! いちどボコボコを潰してなめらかになった編上靴は、その後のお手入れも簡単。アヤベもよくやっていた、オススメの方法です。

だからといって、編上靴の表面のボコボコを潰すためのアイロンが職場や内務班にわざわざ準備されているわけではありません。皆、どうしていたのでしょうかね? アヤベはというと――今だから言いますが、休日でみんなが外出しているときに、備え付けのプレス用のアイロンでこっそり潰して、ささっと拭いて知らん顔していました。ごめんなさい。ただこのアイロン潰し作戦、現在はあまりポピュラーではなくなっているとのこと。

続いて、ふたつ目。
こちらは、表面のボコボコに、水を含ませた靴墨をたっぷりつけて、やわらかい布で擦りながらひたすら埋めていくというもの。アイロンで潰すのと真逆の作戦です。現在は、こちらが主流になってきているとか。

さて、短靴にしろ、編上靴にしろ、靴磨きはここでは終わりません。靴墨をなじませたあと、最後にやわらかい布で磨き上げる仕上げ加工が肝心なのです。

磨き用の布にもこだわります。靴磨き専用の布もありますが、ストッキングが効果的だというのは、全隊員が周知の事実。それをどうやって入手するかというと……わざわざ、新品のストッキングを靴磨き専用に購入する隊員もいるにはいますが、女性隊員や家族、お付き合いしている彼女にお古を譲ってもらいます。もちろん、譲ってもらうときは、お願いの仕方に注意が必要です。

ここで、靴磨きをさらにこだわり抜いているのは、北陸地方の某基地で勤務している幹部自衛官のG3尉。
G3尉は、とにかくマメでキレイ好き。もちろんプレスも完璧、靴磨きの仕上げに入る前には、靴の表面をさっとライターの炎であぶって、靴墨のなじみをよくしてから磨き始めるという手の入れよう。たまに、ほつれた糸が燃え上がったり、靴墨の量が多すぎて、油分に火がついてビックリしているところを目撃されています。

このG3尉、もちろん最初はストッキングで靴を磨いていたのですが、満足できなくなったのか、靴磨きのためにありとあらゆる布類を試しました。その結果――女性が使うメイク用のコットンが、この世の中で靴をいちばん輝かせる! ということを発見し、月に一度は新しい種類のコットンを買いに、ウキウキしながらドラッグストアへ行っています。

こんなにマメなG3尉なのですが、女性に対してはそのマメさと探究心を全く発揮できないオクテ隊員でありまして……。情熱の方向が突き抜けすぎている、実にもったいない男性なのであります。誰か、靴磨きに理解のある女性はいないもんでしょうかねぇ。きっと、いいコットンを教えてくれますよ

アイロンがけが苦手な隊員はいますが、靴磨きは基本的に自分でやるもの。隊員は、靴の汚れだけはすぐに落として、ささっと磨くクセがついています。

制服姿はキリッと凛々しく、どこか輝いて見えるものですが、ぜひ足元も見てあげてください。靴も輝いているんですよ!

サバゲー後、車に乗る前の手洗いや洗顔に!
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綾部綾

長崎出身、名古屋市在住、元航空自衛官。
ライター&プランナー。
料理と宴会幹事が趣味で、サバゲでは主に弁当、炊事、打ち上げ等の後方支援を担当。

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