小ネタから裏話まで!「ジャンクハンター吉田のアクション映画再評価」~『ゴッドファーザー』編

『心に残った銃撃名場面ベストテン』。
その3位に挙げたのは『ゴッドファーザー』。もちろん第一作目です。

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実際に死んでいる馬の首を切り取ったものを撮影現場で用意し、激しくグロテスクな生首をベッドに置くシーンは幼稚園時代に父親から名画座で観せられた時のトラウマでしたが、コルレオーネ家の長男ソニーが有料道路の料金所でトンプソンSMG持った連中に全身蜂の巣にされるシーンが本作最大のキラーショットでしょう。

撮影現場でアクション・シークエンスに対する演出がどうにも上手く表現できなかったのがフランシス・フォード・コッポラ監督。そんな一方で観客へインパクトを残す死に方を模索していたソニー・コルレオーネの殺害シーン。ウォーレン・ビーティ&フェイ・ダナウェイ主演『ボニーとクライド 俺たちに明日はない』の銃撃シーンを参考にして撮影したそうですが、パラマウント・ピクチャーズ側からもプレッシャーを与えられていたこともあり、あのマシンガンで蜂の巣なシーンはコッポラの溜まっていたストレスが爆発した賜物でもあります。おかげで強烈に記憶へ残されましたが、と同時に銃殺される恐怖も・・・。頭を一発撃たれて死ぬ方が遥かにラクだなと幼少期に実感しました。


イラスト:やまもとわかな

父親から何度も名画座へ連れて行かれ『ゴッドファーザー』を鑑賞させられましたが、いつ観てもソニー殺害シーンが怖くて怖くて仕方なかったです。そんな父親はソニーみたいな性格でしたが、筆者には「ヴィト・コルレオーネみたいな何でも相談される側になれば最終的に自分が優位に立てる」と、幼心に危険な帝王学を身に付けました。

先日CS/CATVチャンネルのムービープラスにて初オンエアされた4話に渡る『ゴッドファーザー テレビ完全版』を鑑賞したのですが、観たこともない追加シーンが多くビックリしました。このような作品はいつまでも色褪せません。いつかはBlu-ray&DVDのパッケージになると思いますので『ゴッドファーザー』ファンならば絶対観ておくべきです。
筆者は恐らく44年間生きてきた人生で『ゴッドファーザー』を100回ぐらい観ているほど好きで、そして音楽も大好き。70年代の暴走族がニーノ・ロータが奏でた『ゴッドファーザー 愛のテーマ』を爆音で発していたのを知る人は、間違いなく筆者と同世代以上の年齢でしょう。実兄は暴走族でしたが筆者はノンケです。なので子供の頃からこの曲を常に耳にしてました。

『ゴッドファーザー』と言えば幻の企画で終わった第三作目があります。『ロッキー3』『ランボー』の大ヒットでシルヴェスター・スタローンが自身で稼いだお金を出資して、80年代前半にコッポラ監督の妹タリア・シャイアを介し『ゴッドファーザーPARTⅢ』の監督・脚本・出演で話が動いていました。パラマウント・ピクチャーズとしてもドル箱スターになっているスタローンが看板作品の続編を撮ることに大きな期待を寄せていましたが、アート志向の強いコッポラは派手なブロックバスター・ムービーばかりのスタローンに対し首を縦に振らず、結局コッポラ自身が製作費をかき集め、三度監督する形になったのは知る人ぞ知るビハインドなネタです。

スタローンが『ゴッドファーザー』にここまでこだわった理由は、第一作目のソニー・コルレオーネ役のオーディションへ応募していたからです。オーディションの条件は”イタリア系俳優”。スタローンも大勢の若手俳優に混ざって狙えばいいものの、欲を出してメイン格のソニーを狙ってしまったから書類選考の時点で落選(同じイタリー系のロバート・デ・ニーロは最終選考まで残り実技で落選)。しかし、友人で後に『ロッキー』にも出演したジョー・スピネルはモブキャラに当選して出演。彼は『ゴッドファーザーPARTⅡ』にも出演しましたが、親友だったスタローンのことを思い、『~PARTⅡ』の撮影現場でコッポラへ「小さな役でもいいので役者の親友へチャンスをもらえないか?」と直訴。当然、ポルノ映画にも出演しているド無名なスタローンのことは受け入れてもらえず、『~PARTⅡ』でも出演が叶わなかったのです。

その悔しさがエネルギーへ変化し、ロジャー・コーマンが30万ドルで製作した『デス・レース2000年』のオーディションを受けた際、マシンガン・ジョー役を見事射止めました。実はこれ、『ゴッドファーザー』でソニー・コルレオーネがマシンガンで蜂の巣にされて絶命するシーンに対する、スタローンならではの皮肉的表現だったのです。
なぜかスタローンのトリビアで終わってしまいましたが、筆者のコラムに求められているのは、このような小ネタっぽいので何卒ご了承くださいませ。

ジャンクハンター吉田
http://www.junkhunteryoshida.com/
書籍『ゲームになった映画たち』シリーズの著者であり、ゲーム・映画のコラムニスト扱いされている肥満児(非卍)かつ、体を張ったフリーのジャーナリスト。リブート版新生『ロボコップ』Blu-ray&DVD発売中。殉職したらロボコップ計画へ自分の身体をドナーとして全て提供するつもりな今年44歳のダメ人間。

ジャンクハンター吉田

ジャンクハンター吉田
書籍『ゲームになった映画たち』シリーズ(三才ブックス、マイクロマガジン)の著者であり、ゲーム・映画のコラムニストとして活動するかたわら、体を張ったフリーのジャーナリストとして数々の無茶ぶりなオーダーもこなす。殉職したらロボコップ計画へ自分の身体をドナーとして全て提供するつもり。

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