帰ってきた酔っぱらい!狩野健一郎の「プロファイリングだよ! おっかさん!」Profile #4 『チェチェン・ウォー』

《WARNING》
本連載で取上げる映画作品は、必ずしも鑑賞を勧めるものではございません。

【タイトル】
『チェチェン・ウォー』

voynaphoto

「プロファイリングだよ! おっかさん!」――それは、筆者選りすぐりのB級アクション映画に登場する、ある1人の人物にスポットを当て、筆者自身が独断と偏見の眼でペロンとプロファイリング! 果てに炙り出されたその登場人物の赤裸裸な性向を、時には模範に、また時には反面教師として、我らが人生をサバイバルする上での糧に供そうとする試みである。

間は誰だって、それまでに培ってきた経験が“顔つき”ににじみ出てきます。幾度もの逆境を乗り越え、スターの座を手に入れたスポーツ選手はみんな、渋くてカッコいい“顔つき”をしています。対して今回ご紹介する映画。こちらの主人公イワンは、“顔つき”からどことなく青臭い雰囲気が醸し出されています。「どうせ女性経験もない大した奴じゃないんだろうなー」なんて思いながら見ていたのですが、彼の言動は妙に渋くてカッコいい…。あれ?コイツ俺より全然凄い奴じゃね!? やっぱり人は見かけだけじゃないんだなあ…って思わせてくれたこの作品。今回も主人公イワンの真髄を探りながら、作品の理解をより深めていきましょう!

[Profile]
名前:イワン・イェルマコフ(アレクセイ・チャドフ)

voynaiwan

性別:
年齢:20歳そこそこ?
職業:元ロシア軍軍曹、現受刑者
女性遍歴:童貞率76%
血液型:推定AB
身長:5’ 93”(176cm)

[グレート・ピックアップ・ポインツ!]
ルックスが青二才だ。
その割にやる事なす事老けている。
英語が話せる。
ON/OFFの切り替え(特に戦時・非戦時での)が非常にうまい。
ヘビースモーカーで水虫持だ。

[考察]
 軍歴2年弱にも関わらず兵士として能力が高いのは過酷なチェチェン紛争が育んだか、それとも生来の性向か。多くが感情的に走りがちな復讐を終止冷静沈着に成し遂げるスキルは末恐ろしい。
 コンピューター関係の仕事に就くのが夢だったが、捕虜生活からの解放後は地元トボリスクで荷積みの仕事をしていたようだ。
 解放され帰郷してすぐ入院中の父親を見舞うなど親孝行な一面も。
 身代金受け渡し作戦中は一瞬の躊躇も無く敵に向かい引き金を引いたが、作戦後その報酬の全てを作戦を手伝わせたチェチェン人の自称“羊飼い”ルスランと救出したロシア軍のメドベデフ大尉に渡すといった情に厚い一面も。
 結局「いいやつ」なんだと思う。特に味方にした場合。

[補足]
イワンの出身地とされるトボリスクはシベリア西部チュメニ州にある都市です。
チェチェン武装勢力のリーダーのアスランが要求した身代金200万ポンドを当時のレートで日本円に直すとだいたい3億8000万円になります。
イワン役のアレクセイ・チャドフは4月7日にリリースされる新作DVD『ヴァーサス』(発売元:株式会社トランスフォーマー)で、主人公の格闘家ヴィクトルを演じ、オクサナ・アキンシア(e.g.『ボーン・スプレマシー』)と共演しています。
DVDストレート作品でよくありがちなのが「ジャケが中身を越えること」ですが、本作はその中身がちゃんとジャケを越えているので安心してご鑑賞下さい。
「イワンらを載せて濁流を下る即席の筏 vs. チェチェン武装勢力を満載して未舗装の道を疾走する中古バス」の撃ち合いは見物です。

[総評]
物語は、ロシアのとある刑務所で恐らく西側であろうTVメディアのインタビューに、本来は英国の民間人と「元」とはいえ自軍の大尉の命を、チェチェンの武装勢力から救った英雄として敬わられていいはずのイワンが、答える形で進みます。
でも結局ね、ロシアのそれもモスクワやサンクトペテルブルグといった大都市出でなしに、シベリアの……どこでした? ああ、トボリスクといった田舎出の、本来気のいい青年が、まだ多感な時期に戦争と俘虜生活のWパンチ喰らって、それでも生存出来る様な独特な人間形成を経たものの、そこで得たスキルは非常の戦地では活きるけども、日常の金がもの言う世界ではうまくはまらず、挙げ句「富める者=英国人のジョン」にいいようにこき使われた果てに、今、刑務所で不自由を強いられてるっていう、極めてロシア的な「古典」なんですよ。一度も読んだことないけども、やっぱりトルストイとか読みたくなりますよね。ウォトカありきですけど。
劇中節々チャフを放って飛び去っていく編隊の航空機が出てくるんですけど、あれは昨今シリアを空爆しているSu-25じゃないでしょうか。その他に航空援護時に飛来するヘリ(Mi-24)等ね、どうも露軍辺りの協力がありそうな出来映えです。そしてイワンが愛用するアサルトライフルはPSO-1スコープを乗せたAS Valというね。若いのに渋いんだぁ。

 

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【映画タイトル】
『チェチェン・ウォー』

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【作品・DVDデータ】
2002年/ロシア/英題:THE WAR/99分/発売元:株式会社彩プロ/発売日:2010年6月4日/価格:オープン価格
監督・脚本:アレクセイ・バラバノフ
製作:セルゲイ・セルヤノフ
出演:アレクセイ・チャドフ、イアン・ケリー、セルゲイ・ボドロフ・Jr、インゲボルガ・ダクネイト

【STORY】
ある日ロシア軍のイワン軍曹が過酷な俘虜生活を送るチェチェン武装勢力の村に英国人のジョンとマーガレットが連行されて来る。共に舞台俳優だという2人は恋人同士だという。武装勢力のリーダーのアスランはその事を承知の上、身代金目的で誘拐してきたのだ。その後アスランは英語の通訳が出来るイワンとジョンに衛星電話を使い身代金を要求させるが、その額が200万ポンドと法外な故に埒が明かない。業を煮やしたアスランは、イワンとジョンに自分らで身代金を工面するよう2ヶ月の猶予を与えて解放する。但し期限以内に戻らなければマーガレットをこの世の地獄を味わわせて斬首する、という……。

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やまだ ぞんび

長い歴史をもつミリタリー雑誌『コンバットマガジン』のチームの一人。人生のモットーは「いきなりホームランを打てるバッターなんていない」。徐々に徐々に着実に。。

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