昨年、実写映画化もされた漫画家かわぐちかいじ氏の代表作の一つである「沈黙の艦隊」。
1988年から1996年まで連載され、発行部数は3200万部以上。
過去にはアニメ化、ラジオドラマ化もされています。
ちなみに「沈黙の艦隊」とは「潜水艦戦力」を意味する英語の直訳である「Silent Service」から来ています。
そんな人気作に登場する架空の原子力潜水艦である「やまと(コードネーム:シーバット)」の性能とは、どれほどのものだったのでしょうか。
やまと(シーバット)について
ファンの間ではコードネームの「シーバット」のほうが馴染みがあるかもしれません。
意味はそのまま「海のコウモリ」で、日米どっちつかずの蔑称でもありますが、作中では「音を頼りに戦う潜水艦にふさわしい艦名だ」とされています。
そんなシーバットの仕様について、ざっと列記しますと。
建造費:32億ドル
水中排水量:9000トン
全長:120m
最大幅:13m
吃水:10.5m
機関:S8G加圧水型原子炉×1基
主機:蒸気タービン
推進:7翼スキュード・スクリュー×1軸
出力:カタログスペック:60000馬力
実測値:80000馬力
最大速力:水上 35ノット、水中 55ノット
潜航深度:安全潜行深度1000m、最大潜行深度:1250m
乗員:76名
兵装:533mm魚雷発射管×8門、Mk48魚雷(通常/核弾頭)、ハープーンUSM(通常/核弾頭)×計50
艦体構造:変形涙滴型単殻構造
外殻材:チタン合金/無反響タイル
となっております。
兵器ファン以外にはピンと来ないかもしれませんが。
原子力潜水艦とは
潜水艦は、通常動力潜水艦と原子力潜水艦の2つに大別されます。
原子力潜水艦は原子の熱により水蒸気を発生させ、蒸気タービンを回す事によって、大気を必要とせず推進力を得る仕組みの為、食料や乗員の精神力が持つ限り半永久的に潜行が可能です。
原子力となるウランは、1 グラムで石炭3トン、石油2000リットル分のエネルギーを発生する為、原子力潜水艦は半永久的に燃料不足を起こす事はありません。
どんなに速力を出しても燃費を気にする必要がなく、機動力に関しては通常の潜水艦の何倍も優れています。
ちなみに「シーバット」はSSNと呼ばれる攻撃型原子力潜水艦に分類されます。
敵に弾道ミサイルを撃たせない為には、その前に敵潜水艦を撃沈させる必要があり、その任務を果たすのが攻撃型潜水艦SSNの役目とされ、敵の艦艇や空母を攻撃するのもSSNの任務でもあります。
実際の原子力潜水艦について
シーバットがいかに規格外の性能であったかにつきましては、現存する原子力潜水艦のスペックをご紹介するのが早道かもしれません。
そこでシーバットと同じSSNである旧ソ連のコムソモレツの仕様を列記します。
排水量: 水上 5880トン
水中:8500トン
長さ:118.4 m
幅:11.1 m
吃水:7.4 m
機関:OK-650B-3加圧水型原子炉×1基、タービン×1基
推進:スクリュープロペラ×1軸
出力:50000馬力
速力:水上 14ノット、水中 30.6ノット
潜航深度 :安全 1000 m/最大1250 m
乗員:64名
兵装:533mm魚雷発射管×6基
あらゆる面でシーバットが上回っているのがご理解いただけると思います。
もっともシーバットはあくまで架空の兵器であり、作者のかわぐちかいじ氏も、元々実写化の想定などせずに描かれていたと述べておりますので当然とも言えますが。
現在、世界で原子力潜水艦を保有する国はアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、インド、中国の6カ国だけとされております。
そこに日本の名前が加わらない事を願うばかりですね。
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