帰ってきた酔っぱらい!狩野健一郎の「プロファイリングだよ! おっかさん!」Profile #8『ワールド・オブ・テロ〜破滅へのカウントダウン〜』

《WARNING》
本連載で取上げる映画作品は、必ずしも鑑賞を勧めるものではございません。

【タイトル】
『ワールド・オブ・テロ〜破滅へのカウントダウン〜』

「プロファイリングだよ! おっかさん!」――それは、筆者選りすぐりのB級アクション映画に登場する、ある1人の人物にスポットを当て、筆者自身が独断と偏見の眼でペロンとプロファイリング! 果てに炙り出されたその登場人物の赤裸裸な性向を、時には模範に、また時には反面教師として、我らが人生をサバイバルする上での糧に供そうとする試みである。

ナダで実際にあったテロリスト養成事件を基に、勤勉で宗教色のないイスラム青年がいかにして洗脳されテロリストへと変貌していくかを描いた作品。
テロリストが生まれる理由がわかる真面目な作品として十分見ごたえがあるが、内容とはかけはなれたパッケージ詐欺により、我々はB級映画と判断。
今回も主人公のアハメド・レッサム(演:シェニア・ハンダル)の真髄を探りながら、作品の理解をより深めていきましょう!

[Profile]
名前:アハメド・レッサム(シェニア・ハンダル)

性別:
年齢:32歳
職業:アルバイト(浪人生)
女性遍歴:カナダに移住してからは無し
血液型:恐らくO
身長:5’ 9”(175cm)

[グレート・ピックアップ・ポインツ!]
根はいいやつだ。
「故郷アルジェリアでは優等生だった」と臆面もなく自ら言ってのける独特の朗らかさがある。
「イスラムのワイン」と呼ばれるイスラム風コーヒーを淹れるのがうまい。
それは故郷に残った父親直伝のレシピによるものだ。
曰く「湯が沸いたら砂糖を足してかき混ぜる。次にコーヒーを加え泡立ったら弱火にする。仕上げにカルダモンとローズ・ウォーターを少量入れる」と出来上がりらしい(お試しあれ!)。

[考察]
根がいいから結局嘘がつけなかった(米・加国境で大汗をかき御用に!)。
バイト先のハラール・レストランでは「時給上げてよ」が口癖だ。
以前フランス滞在中も窃盗(財布をスル)で数回警察に捕まる等、実は手癖が悪い。
基本「女好き」だ。そのくせ逆ナンパしてきたウェイトレスを「君は名前も定かでない男と一夜を共にして平気なのか?!」と怒鳴り、心底気色悪がられていた。
イスラムのワインに止まらず、爆発物のレシピもマスターしてしまった。

[補足]
カナダ製作のTV映画になります。
実際にあった爆破テロ未遂事件を基にしています。
発覚時期が2000年を迎える目前だったことから、爆破未遂犯のアハメド・レッサムは「ミレニアム・ボマー」と呼ばれました。
舞台に合わせ、カナダの情報機関CSISが登場します。
一匹狼のベテラン捜査官ウェイドに扮するのは同国はトロント出身の名脇役マイケル・アイアンサイドさん(e.g.『スキャナーズ』1981、『トップガン』1986)です。

[総評]
2001年の9.11アメリカ同時多発テロより前の1999年の12月14日に発覚したアルジェリア人青年アハメド・レッサムによるロサンゼルス国際空港爆破未遂事件を基にしたサスペンスドラマです。
イスラム原理主義勢力の圧迫から逃れるように、最愛の父親を残して故国アルジェリアを一人離れた青年が、自由主義を享受しようと渡航したカナダで、憎しみの対象だったはずの原理主義を遥か超える過激思想に染まり、テロリストに生まれ変わるまでが描かれており、興味深く鑑賞いたしました。ええ。暇なもんですから。
ちなみにレッサムが行おうとしたテロの類型をより専門的な用語で「遠隔操作型」と呼び、現実に起きてしまったテロを挙げれば、2016年12月19日の夜、クリスマスの買い物客で賑わうドイツ・ベルリン中心部の広場に、ISの過激思想に染まったチュニジア人の男が運転するトラックが突っ込み、12名の尊い命が奪われた(負傷者56名)「ベルリン・クリスマスマーケット車両暴走テロ事件」がこれに当てはまります。
本作に話を戻せば、遠隔操作型テロにおける「バーチャル・プランナー(テロの指導・指揮を行う人物)」がアルカイダの幹部マジドで、彼に共鳴し過激思想に染まった同胞が集うモントリオールのモスクが「ハブ(CSIS捜査官のウェイドは『テロの空港』と呼んでいた)」、そしてテロの「実行犯」がレッサムになるわけです。
というわけで、「テロリストがどのようにして生まれるか」にご興味のある方には、少なからず資料性のある作品だと思います。但しジャケットほどの派手なシーンは無く、総じて地味ですが……。

【映画タイトル】
『ワールド・オブ・テロ~破滅へのカウントダウン~』

【作品・DVDデータ】
2008年/カナダ/原題:THE TERRORIST NEXT DOOR/92分/発売元:株式会社彩プロ/発売日:2009年2月25日/価格:オープン価格
監督:ジェリー・チコリッティ
脚本:スゼット・クーチャー
出演:キャスリーン・ロバートソン(ニコール、アマル)、クリス・ウィリアム・マーティン(ペルチエ捜査官)、シェニア・ハンダル(アハメド、アハメド・レッサム)、ジョセフ・ハンタキ(モハメド)、マイケル・アイアンサイド(ウェイド捜査官)

【STORY】
イスラム原理主義の迫害から逃れ、意気揚々とカナダに渡ったアルジェリアの青年レッサム(シェニア・ハンダル)。当地のハラール・レストランでアルバイトをしながら大学進学を目指すこととなったレッサムに「学費を支援する」と近づいてきたのは、モントリオールのイスラム共同体の顔役として知られるマジドであった。だがマジドには裏の顔があった。アルカイダと強いつながりのある人物としてカナダ当局が追う監視対象者だったのだ……。

【映像リンク※なし

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やまだ ぞんび

長い歴史をもつミリタリー雑誌『コンバットマガジン』のチームの一人。人生のモットーは「いきなりホームランを打てるバッターなんていない」。徐々に徐々に着実に。。

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