前回は自衛隊の「ご長寿装備」を紹介しましたが、世界に目を向けると自衛隊のもの以上に、長きに渡って第一線で使われている装備が少なからず存在します。
今回はそんな「世界のご長寿装備」をいくつかご紹介しましょう。
現在世界各国で使用されている装備の中で、最も「ご長寿」といえるものの1つに、12.7mm重機関銃「M2」があります。
アメリカ陸軍に採用されたのは1933年ですから、80年以上の長きに渡って使われ続けてきたことになります。
M2は発射時の反動で次弾が装填される単純な構造で故障が少なく、威力が大きい上に命中精度も高いため、過去に何度か後継モデルが開発されたものの、それを退けて重機関銃の帝王の座に君臨し続けています。
現在ではベルギーのFNハースタルが開発した銃身の交換を容易にした改良型、FN M2HB-QCBが主流となっていますが、基本的な構造はほとんど変わっていません。
M2を設計したのは、ガンマニアならばその名を知らない人はいないであろうジョン・ブローニングですが、彼は「ガバメント」の名称で知られるM1911も設計しています。
M1911は1985年にアメリカ軍制式拳銃の座を、イタリアのベレッタが開発したM92に譲っていますが、海兵隊や特殊部隊では、その派生型がいまだに使われています。
M2には及ばないものの、旧ソ連が開発したアサルトライフル(自動小銃)の「AK-47」も、旧ソ連軍に制式採用されたのは1949年。かなりのご長寿装備といえます。電動ガンやガスガンも発売されていますから、サバゲの相棒として使っている人も少なくないのではないかと思います。
AK-47の開発にあたって設計者であるミハイル・カラシニコフは、訓練や教育の十分でない兵士でも容易に取り扱えることに重きを置いて開発したと伝えられています。このため構造は極めて単純で、それ故に命中精度は西側の自動小銃に比べれば劣りますが、北極圏から砂漠地帯まで、いかなる環境においても使用することが可能。泥水に漬かっても作動不良を起こさないといわれるほどタフなアサルトライフルです。
AK-47は旧ソ連だけでなく、旧東側諸国でもライセンス生産が行われました。また敵として戦ってその能力を高く評価したイスラエルや南アフリカでもコピー生産されたほか、かつて旧ソ連の宿敵であったアメリカでも、フルオート機能を除いたモデルが生産されるなど、派生型を含めればその生産数は1億挺に達するともいわれています。
ロシア軍をはじめとする旧東側諸国では、第一線装備として使われなくなっていますが、アジアやアフリカ諸国などの軍隊では、今後も長きに渡って使われていくことになりそうです。
旧ソ連はAK-47以外にも、「RPG-7」というご長寿装備を世に送り出しています。RPG-7が旧ソ連軍に採用されたのは1961年のことですが、半世紀を経た現在でも、世界各国でバリバリの現役装備として使用されています。
RPG-7はしばしばロケットランチャーとして紹介されますが、実際は装薬によって発射された砲弾の反動を後方にガスを噴射することで軽減し、砲弾は発射後に固体燃料ロケットに点火して飛翔する仕組みとなっていますから、無反動砲とロケットランチャーのハイブリッド型というべきでしょう。
RPG-7は反動を軽減するために噴射するガスの量が多いため敵に見つかりやすく、また横風の影響を受けやすいので命中精度が低いという難点もありますが、軽量で価格が安く、また高度な訓練を受けなくても使用できるという、難点を補って余りある長所を持つことから40か国以上の軍隊に採用されています。
車輌に目を向けると、アメリカが1960年代に開発した「装甲兵員輸送車M113」と、旧ソ連が1950年代に開発した戦車「T-55」のご長寿ぶりが目を引きます。
M113は前線に安全かつ迅速に歩兵を輸送する「戦場のタクシー」というコンセプトに基づいて開発された車輌で、コンパクトで軽量ながら11名の完全武装の歩兵を輸送する能力を持っています。
また構造がシンプルなため改造が容易で、装甲の強化などの能力向上改修が何度も行われたほか、歩兵戦闘車型や指揮通信車型など多くの派生型が開発されています。
T-55は当時の西側主力戦車の主砲よりも強力な100mm砲を装備し、また命中した砲弾をはじく効果の高いつお椀型の砲塔など、様々な新機軸が盛り込まれた戦車でした。ソ連の同盟国を中心に多くの国で採用され、東欧諸国でのライセンス生産や中国のコピー生産を含めれば、生産数は10万輌以上に達しています。
現在では第一線装備の座を退いていますが、東欧諸国やアフリカ諸国などでは依然として主力戦車の座に君臨しています。このため装甲の強化や照準装置の近代化といった、T-55の近代化改修を手がける企業も少なからず存在しています。
T-55も十分「ご長寿装備」なのですが、南アフリカ国防軍の戦車「オリファント」は、それをさらに上回るもの。
南アフリカは1990年代初頭まで、アパルトヘイト(人種隔離政策)を行なってきたため、制裁として全世界が武器の禁輸措置を講じていました。そこで苦肉の策として、武器の禁輸措置が講じられる前にイギリスから導入した「センチュリオン」戦車に近代化改修を施して、オリファントを開発することとなったのです。
オリファントは一見すると近代的な戦車ですが、基本的な構造は第二次世界大戦末期に登場したセンチュリオンとほとんど変わっていません。さすがに最近ではガタがきているようで、南アフリカはレオパルト2などの新型戦車の導入を考えていますが、予算不足から実現のメドは立たず、今しばらくオリファントが老骨に鞭打って働くことになりそうです。
オリファントのご長寿ぶりは十分驚きに値しますが、世の中には上には上がいるもので、南米のパラグアイ陸軍は、第二次世界大戦中にアメリカ陸軍が主力として使っていた、「M4シャーマン中戦車」と「M3軽戦車」を保有しています。
私は保有しているだけで、実際には動かしていないと思っていたのですが、2014年の軍事パレードで元気に動いている姿を確認した時には、驚きや呆れを越えた、ある種の感動すら覚えました。
今回は陸上装備に限定しましたが、次回は「海」(艦艇)と「空」(航空機)の「ご長寿装備」をご紹介したいと思います。
※本記事は過去記事の内容を基に校正しています (2017.11)
サバゲー後、車に乗る前の手洗いや洗顔に!
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