ご存知の方も多いかと思いますが、64式小銃の「64」は、1964年に制式化されたことを意味しています。陸上自衛隊の第一線部隊からは姿を消したとはいえ、航空自衛隊や海上自衛隊では数多く使われている小銃が、今から半世紀以上も前に制式化されたものであることに驚く人もいるかと思います。
自動車や家電製品であれば、今から半世紀以上前に発売された商品が、いまだに使わているということはまずありませんが、自衛隊の装備品の更新は、自動車や家電製品のように短いスパンでは行なわれません。限られた予算を有効に活用するため、寿命が尽きるまで使用されることが多いため、64式小銃に限らず、制式化から数十年を経た現在でも現役という「ご長寿装備」も少なくないのです。
64式小銃の制式化から、さらに2年をさかのぼる1962年に制式化された「62式7.62mm機関銃」も「ご長寿」装備の1つです。
(写真は陸上自衛隊のwebより)
制式化されたころの日本人の体型を考慮して小型軽量化を図った点や、プレス加工を多用して当時としては高い生産性を持つといった長所がある62式機関銃ですが、その反面故障の多さや連射時の命中精度の低さから、自衛隊員からの評価は64式小銃以上に芳しくありません。
このため1993年からは後継となる「5.56mm機関銃MINIMI」の導入が進められ、62式機関銃は次第にその姿を消しつつあります。ただ、62式機関銃をベースに開発された、戦車やヘリコプターなどに搭載される「74式車載7.62mm機関銃」は、構造の強化によって62式機関銃の欠点が解消されたことから、10式戦車や機動戦闘車などにも搭載されており、今後も長きに渡って使われていくことでしょう。
数の上では依然として、陸上自衛隊の戦車戦力の中核となっている「74式戦車」も、そんな装備の1つです。74式戦車は1974年に制式化され、現時点では陸上自衛隊が導入した戦車の中で最多となる、873輌が生産されています。
すでに74式戦車には、ロシアのT-90、中国の99式戦車といった周辺諸国の主力戦車と、真正面から戦って勝てる力はありませんが、油気圧サスペンションを用いて車体を前後左右に傾けて地形を利用して戦うことができます。
74式戦車に続いて登場した90式戦車は、北海道に上陸してくる旧ソ連の戦車部隊とガチで勝負をするために開発されたため、北海道以外の部隊には配備されませんでした。このため74式戦車は90式戦車の登場以降も四半世紀以上に渡って、本州以西の部隊の守護神として働き続けてきたわけですが、2010年には後継の10式戦車が登場。また現防衛大綱では、将来的に陸上自衛隊の戦車の総数を300輌にまで削減し、北海道と九州に集中配備する方針を固めていますので、今後は急速に姿を消していくものと思われます。
62式機関銃や74式戦車も十分、「ご長寿」な装備ですが、それをはるかに上回っているのが「11.4mm短機関銃M3」と改良型の「M3A1」です。
その形状がグリースの注入器に似ていたことから「グリースガン」と呼ばれるM3が設計されたのは、第二次世界大戦中の1942年のこと。一定年齢以上の人であれば、1981年に公開された映画『セーラー服と機関銃』で、薬師丸ひろ子が使った銃といえばピンと来るかもしれません。
陸上自衛隊では草創期の1950年代に機甲科部隊の隊員の自衛用装備として導入されています。M3/M3A1に関しては、1999年に制式化された9mm機関けん銃で更新される計画もあったようですが結局実行されず、折りたたみ式ストック型の89式小銃で更新されています。ただ、折りたたみ式ストック型の89式小銃の調達数はそれほど多くないと見られますが、M3/M3A1は現在も現役装備としてがんばり続けています。
M3/M3A1を使っているのは陸上自衛隊だけではありません。海上自衛隊も艦艇乗員の自衛用や基地警備用の装備として、M3/M3A1を使用しています。ただ、こちらは帳簿の上では現役ですが、現在は予備として扱われているようです。
海上自衛隊は護衛艦や潜水艦を、配備からある一定の期間(艦齢)を迎えると更新するという形を取ってきたため、陸上自衛隊の装備に比べれば「ご長寿」なものは多くありません。現在海上自衛隊が運用している護衛艦の中で、最も「ご長寿」なのは、1980年に就役したヘリコプター搭載護衛艦の「くらま」ですが、2017年3月にはいずも型ヘリコプター搭載護衛艦の2番艦に後を譲って、退役する予定になっています。
(写真は海上自衛隊のwebより)
ただ、「くらま」に関しては、先ごろ来日したフィリピンのアキノ大統領が売却を求めているとの報道があります。もし売却されてフィリピン海軍で第二の人生を送ることになれば、歴代の護衛艦の中でも屈指の「ご長寿」装備となります。
航空自衛隊の装備の中で、「ご長寿」の代表格と言えるのが、「F-4EJ改戦闘機」でしょう。F-4EJ改の原型であるF-4ファントムⅡの試作機が初飛行したのは1958年のことで、1971年に航空自衛隊に初号機が導入されてから40年以上の歳月が経過しています。
現在運用されているF-4EJ改は、1980年代に機体寿命の延長と能力向上改修が行なわれていますが、それでも改修から20年以上が経過。後継機にはF‐35Aの導入が決定しており、来年夏にはその初号機がお披露目される予定になっていますが、導入される42機が揃うのは2020年以降の予定とのこと。
F-35Aが揃うまでの間、F-4EJ改は今しばらく老骨に鞭打って日本の空を護り続けることになります。
※本記事は過去記事の内容を基に校正しています
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