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※引用元:ブーストマガジン
「空の産業革命」と言われ、産業用として、また、ホビーとしても注目されているドローン。急成長のまっただ中にあるこの分野では、さまざまな分野でキーとなる人物が活躍している。この連載では、ドローン業界の成長を担うキーマンに直接お話を伺い、ホビーから産業まで幅広いドローンの活用の可能性について探っていきたい。
初回となる今回は、中国のドローンメーカーの日本法人DJI JAPAN株式会社(以下、DJI)Associate Marketing Director柿野朋子氏にお話を伺った。DJIと言ってもピンと来ない方も多いかもしれないが、DJIはホビードローンの世界シェア70%を占め世界最大のドローンメーカーだ。同社のホビードローン「Phantom」シリーズは特に有名で、全世界累計出荷台数100万台以上で、昨今のドローン空撮ブームを作った機種と言っても過言ではない。機体の写真を見れば、みなさんも一度は見たことがあるのではないだろうか?では、さっそくお話を聞いてみよう。
◯DJI Associate Marketing Director柿野さんってどんな人?
日本における製品PRと販売促進が主な仕事です。新しい製品をみなさんにお知らせしたり、いろいろな企業様・団体様との取り組みを企画・PRしたり。みなさんに弊社の製品を見て頂いたり触れていただく機会を増やすのが自分の役割です。
【田口】柿野さんは昨年DJIに入社されたとお聞きしましたが、どのような経緯でドローンメーカーのマーケティングというポジションに就かれたのでしょうか?
すごく特異なキャリアを持っていて、大卒後の就職先はサービス業(ホテルマン)でした。そこで働き方を覚えたというか、仕事に対する姿勢を覚えました。お客様のためになにかして差し上げたい…という。基本的に仕事をする上では、私はそれが基本です。それはクライアントにもそうですし、一緒に働くチームメンバーに対してもそうです。
そのあとは、中学校で教鞭をとっていました。それもまたサービス業のひとつだと思っていて、子どもたちにサービスを提供するという。私のキャリアは一貫してサービスプロバイダだったということですね。
その後、結婚を機に地元から東京に出てきて、しばらく主婦業に専念していました。だけど、何かやりたい虫が起き出してしまいして、そこから初めてマーケティング・コミュニケーションの領域に入りました。ですので、マーケティングとしてのキャリアは15年位ですかね。すべてIT系の外資系企業でした。
【田口】そのあたりの経験を活かしながら今のお仕事をされているわけですね。
そうとは限らないと思います。私の印象では、DJIはまったく経験は要らないですね。今までの経験が逆に邪魔をする場合もあるかもしれないと思っています。誰もやったことがないことをやらなきゃいけないので、今までの経験というものが役に立たないことが多くあります。
【田口】確かに、ドローンというものがそもそも新しい領域ですし、それをさらにものすごいスピード感で進めていくわけですもんね。
製品開発はすごくスピード感があるけど、マーケティング活動は追いついていないところも多いので、まだまだ私たちは足りないことだらけだと思っています。もっとトレンドを作っていかなくてはならない。やはり「DJI=ドローン」になっていかなくてはならないし、使っていただくシーンを増やすための努力をしなくてはならないと考えています。
◯DJIが創業・ドローン事業に参入したきっかけは?
【田口】DJIは今年で創業10周年だそうですが、10年でドローンの世界シェア70%を占める企業に成長しました。どのような経緯でドローン産業に参入したのでしょうか?
創業者は現在もグローバルのDJIでCEOを務めるフランク・ワンです。彼は大学時代にラジコンヘリコプターのフライトコントローラー(姿勢制御装置)を既に完成させていて、すでに引き合いもあったそうです。2,000ドルのコストで制作したものが、6,000ドルという3倍の値段で売れたと聞いています。これがきっかけとなり、会社を設立しました。
【田口】初めはラジコンヘリコプター関連のパーツを販売していたのですか。今のDJIを見ているとマルチコプター(プロペラが複数ある機体)というイメージが強いのですが。
今でこそマルチコプター型のドローンを主に販売していますが、当初フランクはマルチコプターを重視していませんでした。フライトコントローラーを制作したのも、小さいときに親から買ってもらった日本製のラジコンヘリコプターを墜落させてしまった経験から、安定してフライトすることができるコントローラーを自分で作った…という経緯があります。しかし、たまたまニュージーランドの業者がジンバル(機体に付いているカメラの姿勢を安定させる装置)を大量に販売しており、その用途がマルチコプターに取り付けて空撮しているということをフランク自身が聞く機会がありました。そこで彼は「ひょっとしたらこれはビジネスになるのではないか?」と考えたそうです。そしてヘリコプター用のフライトコントローラーを改造してマルチコプターに対応させると、それもすぐに売れてしまいました。
でも、このころのマルチコプターはDIY的にユーザーがいろいろな部品を組み合わせて作るのが主流でした。それではユーザーにとって使い勝手が良くないし、作った人によって性能がまちまちになってしまう。せっかくいいフライトコントローラーを搭載しても、その性能を発揮できないこともある。そこから、今のPhantomのようなオールインワンパッケージの入門モデルを制作するという発想につながりました。
【田口】なるほど。そこでPhantomシリーズが誕生するわけですね。ちなみに、柿野さんはフランク・ワンさんにお会いしたことはありますか?
ありますよ。私の個人的な所感ですが、物静かなイメージでした。お隣にいると気づかないかもしれませんね。私鈍感なので。。。エンジニアなので当たり前ですが、エンジニアっぽいとういか。でもとてもオーラがありました。
完璧主義でストイックだからこそ、オリジナリティを追及し、DJIをここまで成長させてきていると思います。
【田口】社長さんがストイックなエンジニアタイプだったとは驚きです(笑)。DJI製品の技術の高さはフランク・ワンさんあってのことかもしれませんね。他社さんの技術者の方とお話することもあるのですが、みなさんDJIの技術の高さには驚かれています。その技術的なアドバンテージはどこから来るのでしょうか?
開発力ですね。2016年でグローバル全体の社員が5,000人になりましたが、1,500名以上の開発チームと2,000人以上の工場スタッフがいます。それに加えて、スタッフが若い!特に開発メンバーが非常に若いと思います。Officialなデータではないのですが、平均年齢28歳くらいではないでしょうか。DJIの社風として開発スピードが速いというのは若い人の登用が多いからだと思います。だから、失敗してもいい、まずやってみましょう…という雰囲気です。マーケティングもそうなのですが、「ハイ、これ今日とか明日までによろしく!」ということがよくあります(笑)。各担当とも死ぬ思いでやっていると思います。
それと、ユーザーのニーズをたくさん聞いていると思いますね。ドローンに関する多くの情報がDJIに入ってくると思うので、それを製品にいかしてスピーディーに作っています。日本にいても「ドローンを◯◯に使いたい、こういった使い方をしたい」というご要望をお客様からたくさん聞くので、中国、アメリカではもっとそのような声が寄せられているのではないでしょうか。DJIには、それを製品に活かせられるアドバンテージがあると思います。
【田口】なるほど。そういった若さとパワー、そしてマーケットからの声が集まる立ち位置があるからこそ、この10年でここまで会社が成長したということですね。
あとはマーケットの環境に恵まれていたのもあるし、DJIファンの方も多いので、そのへんはすごく嬉しいですよね。それは製品のおかげだと思います。
【田口】アイデアは、新しいツールで一気に生まれることもあると思うのですが、新しい製品などが控えていたりします?(笑)
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