こんにちは、アヤベです。
自衛隊には、日々の訓練以外にも、命令を出して行う強化訓練があります。持続走をはじめとした体育訓練、銃剣道や剣道といった武道訓練、変わったところでは英語のスピーチ訓練などもありますよ。
アヤベも持続走の強化訓練に参加したことがあります。――お恥ずかしいことに、走るのが遅くて規定のタイムが切れない人のための底上げ訓練でしたけどね!
強化訓練には、他基地にて合宿スタイルで行われる転地訓練があったりします。
今回ご紹介する出来事は、持続走の転地訓練――もちろん、走るのが速い人たちのための強化訓練です――で起こりました。
その持続走訓練に参加していたのは、Y基地に所属する男性隊員13名、女性隊員2名の計15名。足元が凍り始める冬場に、少し暖かい地方のA基地に滞在して訓練を行いました。宿泊するのは外来宿舎。もちろん女性には女性隊員専用の外来宿舎があります。A基地の外来宿舎は2棟ありまして、そのうち1棟の3階が女性隊員専用のエリアでした。男性隊員はもうひとつの外来宿舎が割り当てられていたので、訓練中は少し離れたところで寝起きしていたわけです。
約1週間、違う景色の中で駆け足に励んだ15名は、最終日に打ち上げと称して宴会を行うことに。宴会には、以前Y基地に所属していて、A基地に転勤になったB1曹も招かれました。B1曹も、以前Y基地で持続走の強化訓練に参加していたことがあったのです。久しぶりに会う仲間と近況報告に花を咲かせていたのですが…
宴が盛り上がってきたとき、女性ふたりがこんなことを言い出しました。
「そういえば、ここの外来って、夜中のボイラー音がすごいですよねえ~。ガターン! パチーン! って。夜、トイレにいくときビックリしちゃいました」
「ね~」
「男性のほうの外来は、そんなことなかったけどな~」
口々に言い合う隊員たちの隣で、B1曹がビックリしています。B1曹の職種は施設関係。何か異常を思い当たったのでしょうか。若干、顔を引きつらせながら
「明日、調べてみることにするよ」
と、言って、突然「そういえばさぁ~」と、最近着隊した新隊員の話を始めました。
和やかに宴会が終わりまして、次の日。B1曹は、女性フロアがある外来宿舎にボイラーの点検に――行きませんでした。
なぜかといいますと、その外来宿舎にはボイラーが通っていなかったからなのです! では、彼女たちが聞いた夜中の異音は何だったのでしょうかねえ。ふたりが怖い思いで最後の夜を過ごさないようにと、宴会の場では真実を明らかにしなかったB1曹だったのでありました。
どんな基地にも、「七不思議」があるものです。「七」どころか、基地中が不思議の塊みたいなところもありまして、そちらについては、来年あたりにシリーズでお届けしますね。
イラスト:モノ
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