【連載】今日から使えるミリタリー雑学講座~第27回 実在するレーザー兵器を搭載した戦闘機とは?

12月31日の大晦日に、マクロスシリーズの最新作『マクロスΔ(デルタ)』の先取りスペシャルが放送されます。
マクロスポータルサイト
マクロスシリーズでは河森正治氏がデザインする、ヴァリアブル・ファイター(可変戦闘機)が見所の1つですが、原点である「超時空要塞マクロス」の前日談を描いた『マクロス・ゼロ』に登場したVF-0フェニックスから、マクロスΔの前作『マクロスF』の劇場版に登場したYF-29デュランダルまでの多くは、機関砲を収納したガンポッドやミサイルがメインウェポン。
ガンダムシリーズなど、大多数のアニメではメインウェポンとなっているビーム兵器やレーザー兵器は補助的なものと位置づけられています。
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マクロスシリーズに登場するメカニックは、既存の技術と異星人からのオーバーテクノロジーを組み合わせて開発されたという設定になっています。このため多くのエネルギーを必要とし、また大気による減衰といった実用化にあたって解決しなければならない課題の多いビームやレーザー兵器は、まだヴァリアブル・ファイターのメインウェポンにはなり得ないと位置づけられているようで、それがリアリティを与える大きな要因ともなっています。
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現実世界でも前述した課題によって、ビームやレーザーは戦闘機のメインウェポンとはなっていませんが、実はレーザーをメインウェポンとする「戦闘機」が、実用化の一歩手前にまで駒を進めたことがあります。

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の弾道ミサイルは、我が国にとって大きな脅威の1つとなっており、このため自衛隊は弾道ミサイルを迎撃するためのイージス艦や、パトリオットPAC-3ミサイルの整備を進めています。
イージス艦から発射されるSM-3ミサイルPAC-3ミサイルの命中精度は改良によって年々向上していますが、超高速で落下してくる弾道ミサイルの弾頭を撃墜できる確立は、残念ながら100%ではありません。
実のところ弾道ミサイルの弾頭に搭載できる炸薬の量はそれほど多くはなく、弾頭に通常の炸薬が搭載されていた場合、何発か迎撃に失敗したとしても、それによって受ける被害はそれほど大きなものではないのです。しかし仮に核弾頭や生物・化学兵器などが搭載されていた場合は、もたらされる被害は甚大なものになります。

そこでアメリカは発射直後の、まだ加速が十分でない状態の弾道ミサイルを、航空機に搭載したレーザーで迎撃するという手法を考案しました。
発射直後の弾道ミサイルを撃墜するためにはレーザーの射程範囲に近づく必要があり、弾道ミサイルの発射に備えて長時間待機する必要もあるため、搭載する航空機には長い航続距離が必要となります。またレーザーには多くのエネルギーが必要となり、エネルギー源を搭載できるだけのサイズも求められた結果、最終的に政府専用機としても使われている、大型四発旅客機ボーイング747の貨物型が発射母機として選ばれました。

弾道ミサイルの迎撃に使用するための改造を受けたボーイング747の貨物機型はAL-1と呼ばれ、機首部にはゴルフボールのような形状の、レーザー発射装置を収容したターレットを装備。機体には360度の全周に渡って監視と捜索を行なうため、6か所の赤外線センサーも追加されています。
これらのセンサーで弾道ミサイルのロケットモーターから発射時に生じる赤外線を発見したAL-1は、低出力の炭酸ガスレーザーで距離を測りながら、赤外線センサーを併用して目標ミサイルの三次元位置を特定。燃料タンクを狙って酸素=ヨウ素レーザーを発射し、燃料の爆発を引き起こしてミサイル自体を無力化する仕組み。
72AL-1は2008年にレーザーの地上発射試験、2010年2月にはカリフォルニア州の洋上でダミーミサイルを用いた迎撃実験に成功するなど、その開発は比較的順調に進んでいました。AL-1という名称は試験段階で与えられたもので、仮に制式化された場合、既存の軍用機の識別コードのどれにあてはめるべきなのかという議論もあり、飛行目標(弾道ミサイル)を攻撃する航空機であることから、戦闘機を示す「F」が適当ではないかという意見もあったようです。

残念ながらAL-1を使用する弾道ミサイルの迎撃計画は、アメリカの国防予算の削減に伴って中止となってしまい、レーザーをメインウェポンとする「戦闘機」の実用化は幻となってしまいました。

ただ、AL-1に用いられた技術を応用したレーザー兵器の研究は現在も継続されており、C-130輸送機の攻撃機型・AC-130にAL-1と同様のレーザー発射装置を搭載し、地上目標を攻撃する高等戦術レーザーの研究・開発が進められています。
また、F-35Bが垂直着陸に用いるリフトファンを撤去して、そのスペースに発電機とレーザー発振器を装備するための研究や、B-1B爆撃機に巡航ミサイルや地対空ミサイル撃墜用の小型のレーザー発射装置の研究なども進められていますが、限られたスペースの中にいかにしてエネルギー源を搭載するかが大きな技術的課題となっているようです。

航空機に搭載するレーザー兵器の実用化はまだ先の話になりそうですが、実のところ地上や艦艇に搭載するレーザー兵器は実用化されています。
次回は、すでに実用化されているレーザー兵器をいくつか紹介しましょう。

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竹内 修

ライターから不動産シンクタンクを経て、ミリタリー業界に迷いこんできた
自称軍事評論家。サバゲーは長期休業中だが、運動不足解消を兼ねてまた始めよ
うかなと思案する今日このごろ。L85とかF2000のような、ちょっとクセのある銃
が好き。

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