こんにちは、アヤベです。
自衛隊には、いろんな人が入隊します。出身も性格も家庭環境も様々。本当にいろんな人がいるので、共通点は「日本国籍があって、五体満足である」ということくらいでしょうか。27歳までなら入隊できるので、転職組もたくさんいます。「前職が美容師」なんて男性もいましたよ。
今回ご紹介するY君は、東北地方の漁師の一人息子。代々漁業を営んでいて、おじいさまは地元で議員をなさっている名士です。ところがY君、高校生になって進路を決めるときに「一生海にいるなんて嫌だ!」と言いだしてしまいます。
そこでおじいさまは、「それなら、何年か自衛隊にでも行ってこい。一生海が嫌なら、陸上なんてどうだ」と、フィールドチェンジを提案しました。地域に協力的で保護司をやっていたこともあるおじいさま、いろんな家庭の子供たちを見てきています。孫のY君は一人っ子で甘やかされているように見えたのでしょうか、一度は「他所の飯」を食べさせないといけないなと思っていたのです。
とにかく実家から出てみたかったY君は陸上自衛隊に入隊。関東地方の駐屯地の後方支援隊に配属になりました。海がない県で暮らすのは初めてのY君でしたが、力もあって手先も器用。フォークリフトの資格を取ることができて、毎日任務に励んでいました。荒っぽい漁師に囲まれて育ったせいか、上司や先輩を立てるのも上手――なのですが、お酒が入ると若干、ほんとうに若干、荒ぶる漁師気質が顔をのぞかせて喧嘩っ早くなることがありまして、何度か外出禁止のお仕置きをくらったとか。
元気に自衛隊生活を満喫していたY君でしたが、あの東北大震災がおこります。Y君の実家も、ご家族は無事だったものの被害に遭いました。
Y君は、直接現地での支援活動に携わることはなかったものの、物資の運搬作業など後方支援に当たりました。入隊してからは「このままずっと自衛隊にいたいな」と思っていたこともあったY君ですが、「自衛隊経験を生かして、非常時に地元との調整に役立ちたい」と考えるようになり、しばらくしてから東北に戻ることを決断。地元をでてからちょうど6年後の春、任期満了退職して漁業を継ぐことになりました。
退職する隊員は、予備自衛官になりたいかどうか訊かれます。Y君はもちろん志願して、地元の消防団にも所属しました。――ここまで聞くと、いい話みたいでしょ? でも、実はY君がいちばん楽しみにしているのは、宴会。自衛隊で覚えた大騒ぎの宴会が楽しくて、いろんな仲間と飲む機会を増やしたかったのでありました。
心配なのは、例の、お酒を飲むとちょっと喧嘩っ早くなっちゃう気質なのですが、それも大丈夫。「元自衛官・現予備自衛官の立場で民間人と喧嘩をすると、非常にまずいことになる」とおじいさまに言い聞かされて、今では品行方正(?)に酔っぱらっているそうですよ。
元隊員であっても、悪いことをするとその所属や経歴を発表されるため、毎日頑張っている現役隊員に迷惑をかけてしまいます。アヤベも、悪いことしないようにしなきゃ。
イラスト:モノ
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