こんにちは、アヤベです。
サバゲ好きのみなさまなら、フィールドで現役隊員らしいサバゲーマーの姿を見かけたことがあるのではないでしょうか。今回は、サバゲに参加した元隊員のお話です。
連載14「意外と多い○○男子」と18「自衛官が持ってはいけないもの」で登場したオタク男子のS君は、自衛隊を退職したのち、現在はデザイナーとして雑誌やパンフレットのデザインをしています。ですが、趣味はお絵かき。仕事が終わると、寝る間を惜しんで、大好きなガンダムとスクール水着の女の子が登場するマンガを描いています。コミケにも時々出展しているそうですよ。
そんなS君ですから、オタク方面の仲間がどんどん増えていきます。彼らは実に多趣味な人が多いですよね。あるとき、趣味がサバゲという仲間ができたS君、誘われるままサバゲに参加することになりました。
とはいっても、S君が元隊員だから誘われたわけではありません。いつも、自己紹介もそこそこにお絵かきやガンダムの話で盛り上がってしまうので、言うタイミングを逃したまま仲良くなってしまったのでした。
ところがS君、サバゲに誘われたときも、自分が元隊員だということを黙っていました。なぜかといいますと、現役時代のS君は輸送機の整備、それも無線通信器が専門だったからです。「自衛官」と言うと、いつも演習場で戦闘や野営をしたりといった訓練をしていると思われがちですが、自衛隊の職種は様々。射撃訓練や銃の手入れなどをする機会はたまにありますが、全員が「地上戦闘のプロ」というわけではないのです。仲間に変に期待させては申し訳ないと、元隊員だなんて言いだせなくなってしまっていたのでした。
さて、デビュー戦当日。会場は関東地方の某森林型フィールドです。装備をレンタルして説明を受けている間、「エアガンなんか初めて触った」ような顔をしていたS君なのですが……。すぐに仲間が違和感に気がつきます。それは、S君のエアガンの持ち方と視線でした。サバゲに精通したみなさまならおわかりかもしれませんが、初心者はとにかく取り扱いが危なっかしいものです。引き金に指をかけたまま歩いたり、銃口を振り回したりしがちですよね。
S君はたった3年間という短い期間だったのですが、ホンモノの64式自動小銃(陸自は89式ですが、空自と海自は64式が主です)を触っています。銃口を絶対に人に向けないように持ち歩く、撃つ瞬間まで引き金に指をかけないという基本がしみついていたので、持ち方から実にサマになっていたのでした。
エアガンを下ろすときにも、銃口の先に人がいない空間を無意識に選んでいるS君の姿を見て、これは普通じゃないぞと思った仲間たち。「経験者?」「身内が狩猟をしているの?」と質問攻めにあったS君、とうとう「実は……」と経歴を白状することになったのでした。
S君が元隊員だということを黙っていたのにはもうひとつわけがありました。実はS君、現役時代に射撃訓練で0点をとったことがあるというほどの射撃下手。なんと「隣の的を狙ってしまった」のだそうですよ。
そのうえ、慣れ親しんだ(?)64式とは感触も反動も違うエアガンに四苦八苦したS君、初サバゲの結果がどうだったかといいますと……S君の名誉と自衛隊の信頼のために、黙っておこうかな。
イラスト:モノ
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