こんにちは、アヤベです。
2003年から2009年までの5年間近くにわたって、中東への海外派遣が行われていたのはみなさまも記憶に新しいのではないでしょうか。陸上自衛隊はイラク南部のサマワの人道復興支援活動を、航空自衛隊はクウェートを拠点とした輸送活動をしていました。
海外出張がよくあるお仕事の方もいらっしゃるでしょうが、自衛隊の派遣活動は「2週間くらいで帰ってくる」というわけにはいきません。3~4ヶ月は日本を離れて、文化も気候も全く違うところでの集団生活。荷物も必要最小限ですし、休日の行動にも制約があります。
いつもよりストレスの多い生活を送っている隊員にとって、嬉しいのは家族からの慰問品です。元いた部隊にお願いすれば、家族からの手紙やちょっとした雑貨なんかを届けてくれることになっていました。
とはいえ、送り先は日本とはちょっと慣習の違う中東地方。宗教上の理由で、飲酒や女性の肌の露出に厳しいので、ビールや焼酎などのアルコール、袋とじのグラビア写真のついた週刊誌なんかを送ることはできません。もし流出なんかしたら、外交問題になりかねませんからね。
家族からの慰問品の内容には、厳しい制約があったのです。たとえば、豚肉だけではなく「ポークエキス」が使われている食料品はダメ。原材料にアルコールが入っているものもダメ。これはもう、仕方がありません。
ここで、意外な原材料がNGになってしまいました。それは――みりん! みりんは調味料ですがアルコール製品です。みなさま、スーパーやコンビニでお菓子売り場の原材料をよく見てください。おせんべいや柿の種など、米粉を使った和風の味付けのお菓子は、ほとんどみりんが使われているのです。みりんを使っている食品を送ることができないというのは、大変な落とし穴でした。
ある隊員のお母さまは、「柿ピー」が大好きな息子のために、みりんが使われていない柿ピーを探し回って、とある100円均一のお店で、ようやくみりんナシの柿ピーをゲット! その場にあるだけ買い占めたとのこと。
新婚わずか半年で旦那さまの派遣が決まった奥さまは、「帰ってきたらいろんなところに遊びに行こうね」と、タウン誌と旅行の雑誌を慰問品の中に入れたのですが、ちょうど季節は夏。「ビーチ特集」の水着姿の女性がNGですので、水着姿のページは切り取るか、マジックで黒く塗りつぶす作業を余儀なくされました。
異国の地で任務についている隊員にとっては、中身よりも気持ちやことばが嬉しいもの。同封してある写真やお手紙にグッときて、思わず涙した、なんて話をよく聞いたものでした。どんなお仕事でも、モチベーションを保ちつづけるのが難しいときがあります。そんなとき、家族の存在というのは大きいものですよね。
イラスト:モノ
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