海上自衛隊が主体となって3年に1回開催される「観艦式」。
総理大臣の乗る観閲艦に対して、海自の主要艦艇が一列で航行して観閲を受けるという、相模湾沖で大々的に開催されるイベントです。
今回の本番は10月18日(日)ですが、12日(月)と15日(木)に予行が開催され、本番と同じく護衛艦に乗船して見学することができます。
今回は12日の予行で観閲艦「くらま」に乗船してきたので、その様子と観閲式の見どころなどを紹介します!
運よくチケットを入手できたとして、当日の問題は横須賀基地に早朝に集合するということ。
「くらま」の乗船受付は7:00~7:45ということで、人によっては始発を乗り継いでも間に合わないかもしれません。
とにかく、横須賀基地のゲートをくぐり、荷物検査や搭乗証のチェックを受けて、該当の桟橋に向かうと・・・
いました! 本日乗り込む「DDH-144 くらま」です!
「くらま」は、しらね型護衛艦の2番艦となるヘリコプター搭載型護衛艦。
2017年に「DDH-184 かが」と交代する予定があり、今回の観艦式が最後の参加になるといわれています。
乗り込むと、ヘリ甲板では栄誉礼が行われていました。
海自の儀仗隊は64式小銃を装備。
この日は予行なので、エライ人達はあくまで仮の代役が立てられます。
写真はイメージです。
さて、9:15に「くらま」は出航。
隣接する米海軍基地では、新たに配備された原子力空母「CVN-76 ロナルド・レーガン」を目撃。
さすがにでかい! そういえばこの日(12日)はこの空母の一般公開がありましたね。
さて、観閲部隊は浦賀水道を通って相模湾沖へと向かいます。
構成は先導艦「DD-101 むらさめ」、観閲艦「DDH-144 くらま」の順。
その後に随伴艦の「MST-463 うらが」、「ATS-4203 てんりゅう」、「TV-3517 しらゆき」、「ASR-403 ちはや」、「DDG-176 ちょうかい」と続きます。
DD-101 むらさめ
観閲艦の露払いを受け持つ先導艦を担います。
DDG-173 こんごう
観閲部隊と並走する「観閲付属部隊」の一艦になります(木更津より出発)。
11:00過ぎに後部甲板へヘリの着艦がありました。
観閲官である総理大臣はこのヘリ(MCH-101)で乗艦します・・・が、当然予行なので実際には乗っていません。
さて、12:00になると受閲艦艇部隊が左舷前方よりやってきます。
他国の海軍でも観艦式はありますが、このように艦隊機動を行いながら(動きながら)行う様式はあまり例がありません。
日本では帝国海軍の時代からこのスタイルで観艦式が行われています。
DDG-177 あたご
あたご型護衛艦の1番艦。2007年に就役したミサイル護衛艦で定係港は舞鶴。
前級のこんごう型護衛艦にヘリ格納庫を増設した構造となっていて、独特の平面構造はステルス機能のため。
ミサイル護衛艦ならではの「イージスシステム」も搭載した、海自の主力護衛艦といえるだけあり、受閲艦艇部隊の先頭を努めていました。
DDG-172 しまかぜ
はたかぜ型護衛艦の2番艦。1988年の就役で定係港は佐世保。
2014年10より、第4護衛隊群第8護衛隊に編入されています。
ステルスでもイージスでもないクラシックな護衛艦ですが、それだけに安定したスタイルで人気があります。
DD-111 おおなみ
たかなみ型護衛艦の2番艦。就役は2003年で定係港は横須賀。
2013年1月に発生した「中国海軍レーダー照射事件」では、この艦の艦載機であるヘリに火器管制レーダーを照射されたと話題になったものです。
また、2014年7月にはソマリア沖での海賊対処行動に出航しています。
DD-104 きりさめ
むらさめ型護衛艦の4番艦。就役は1999年で定係港は佐世保。
2012年12月~2013年6月にかけて、第14次派遣海賊対処行動水上部隊としてソマリア沖へ出航しています。
DD-106 さみだれ
むらさめ型護衛艦の6番艦。就役は2000年で定係港は呉。
2014年3月には、第17次派遣海賊対処行動水上部隊として出航していたソマリア沖では、エンジン故障で漂流中だった漁船を救助しています。
DDH-183 いずも
2015年3月に就役したばかりの最新鋭艦で、全通甲板を持つヘリコプター搭載型護衛艦。いずも型護衛艦の1番艦で、現在の海自で使われている中では最大の艦艇になります(2017年に就役する2番艦「かが」の方が大きいです)。
定係港は横須賀。
大型でユニット化された独特の艦橋まわり。SPYレーダーも当然のように装備しています。
甲板には6機のヘリが置かれていました。
船内には最大14機ものヘリを格納することが可能。
今年就役した最新最大、今回最も注目されたのがこの「いずも」です。
SS-505 ずいりゅう
2013年に就役したそうりゅう型潜水艦の5番艦。定係港は横須賀。
ディーゼル・スターリング・エレクトリック式という、世界でも類のない独自の推進システムを搭載しています。
MST-464 ぶんご
うらが型掃海母艦の2番艦。1998年の就役で定係港は呉。
東日本大震災では災害支援に投入され、物資の輸送や被災者の入浴支援で活躍。ぶんごのEOD(水中機雷処分員)は海底の遺体捜索でも大きな役割を果たしました。
MSO-302 つしま
やえやま型掃海艇の2番艦。1993年就役、定係港は横須賀。
第51掃海隊に属し、前甲板には機雷処分用の20mm機銃を搭載しています。
MSC-603 たかしま
ひらしま型掃海艇の3番艦。2010年の就航で、定係港は佐世保。
海自艦艇では最後の木造掃海艇。ZQS-4(機雷探知機)やOYQ-201(掃海艇情報処理装置)を始めとした各種の掃海具を搭載しています。
AOE-425 ましゅう
ましゅう型補給艦の1番艦。2004年就役、定係港は舞鶴。
全長221mという巨大な補給船で、いずも型が就役するまでは最大サイズの自衛艦でした。液体や固体の補給機能はもちろん、非常時には病院船としての運用も考慮されています。
LST-4001 おおすみ
おおすみ型輸送艦の1番艦で、就役は1998年。定係港は呉。
LCACの搭載や全通飛行甲板によるヘリコプター発着も可能。陸自の普通科中隊(約330名)をフル装備で搭載でき、民間人なら約1,000名もの乗艦が可能です。
また、病院船としての運用も視野に入れ、手術室や集中治療室を備えています。
LCAC 2101
エアクッション艇1号型 とよばれるホバークラフト。
当初はおおすみ型輸送艦各艦の搭載艇扱いでしたが、2004年から自衛艦扱いとなり、LCAC-2101~2106までの艇番号が付与されました。
DD-107 いかずち
むらさめ型護衛艦の7番艦。2001年の就役で定係港は横須賀。
2015年3月~8月にかけて第21次派遣海賊対処行動水上部隊として「DD-101 むらさめ」とともにソマリア沖に向けて出航しています。
続いて受閲航空部隊の航過飛行です。
左舷後方より飛来したのは・・・
SH-60J/K UH-60J
海自や空自の多用途あるいは救難用のヘリです。
MH-53E
海自の掃海・輸送用ヘリ。大型で3基のエンジンを搭載しています。
P-3C哨戒機
海自が誇る対潜哨戒機。機体性能よりも、搭乗員の変態的な練度が話題となることもあります。
とはいえ、衛星通信機や画像伝送装置、合成開口レーダーにミサイル警報装置など、年々装備を追加して能力の向上が図られています。
P-8A 哨戒機(アメリカ海軍)
ボーイング737をベースにした哨戒機。
今回はアメリカ海軍のゲスト機として参加しました。
MV-22B(アメリカ海兵隊)
こちらもゲスト参加のMV-22オスプレイ。
固定翼状態ではプロペラの風切音はほとんど聞こえませんでした。
他にも空自のF-15JやF-2A/Bなどの航過もありましたが、戦闘機は小さくて早いので撮影にはちょっとしたコツが必要になります。
航空部隊の受閲が終わると観閲部隊は180度回頭します。
この時、先導や後続の艦艇がナナメから見られるのでシャッターチャンス!
続いて訓練展示が行われます。
IRデコイを発射した後、35ノットの高速でまっすぐ向かってくるミサイル艇。
特に先頭の「PG-826 おおたか」は観閲艦ギリギリまで寄せてきます!
すごい迫力!
P-1哨戒機によるIRフレア発射デモ
新型のP-1哨戒機がフレアーを30発まとめて発射。
かなり景気よくばらまいてくれます。
ブルーインパルス飛行展示
観艦式では初となるブルーの飛行展示もあり!
ブルーは最初だけ右舷側から進入してくるので要注意!
編隊航過が中心ですが、水平演目のサクラを披露しました。
この後、ホリゾンタルのキューピットを描いてミッション終了となりました。
両方とも10mm代の広角レンズがないと全景を撮れません。要注意。
ブルーの飛行展示が終わると、東京湾へ向けての帰路に入ります。
逆光になりますが、右舷側を並走する護衛艦がじっくり撮影できますよ。
こんなイメージカットでも「いずも」はすぐわかります。
シャッターチャンスを意識したとしか思えない並びも多々見られます。
これだけの艦艇をまとめて見られる機会はまずありませんね。
一糸乱れぬ艦列での航行は、またとない撮影機会だと思います。
夕方の16:00、観閲艦「くらま」は横須賀港へ入港しました。
下船は16:30。
タラップから桟橋へ降りるとその場で解散となります。
お疲れさまでした!
観艦式の体験公開に当選して乗船するのであれば、ぜひバッチリ撮影しておきたいもの。
機材面のアドバイスとしては80-300mm前後の望遠ズームレンズ(35mm換算)がちょうどよい距離感でオススメです。
また、ボディがもう1台あれば、広角~標準ズームレンズを装着して撮り分けるという方法もあり。2台のカメラの時計を合わせておくと、PCに取り込んだ時に時系列順に並びます。
筆者はオリンパスのE-M5 markII + 40-150mmF2.8PRO + 1.4倍テレコンと、E-P5 + 14-42mmF3.5-5.6EZの2台を使用しました。
特に2.8通しの明るいズームレンズはシャッタースピードが稼げるのでおすすめ。洋上は風が強く、強風にレンズがあおられてブレる可能性が多々あります。こんな時でも早いシャッタースピードと手ブレ補正機能があれば、ブレの発生をある程度緩和できるのです。
なお、撮影ポジションは必ず左舷をキープしましょう。
受閲艦艇部隊も航空部隊も、訓練展示もすべて左舷側で行われるためです(例外はブルーインパルスの最初の進入くらい)。
同時に甲板上は風が抜けて寒いため薄手でもいいのでジャケットは必携。寒がりの人は手袋があってもいいかもです。
こんな感じでさばなびの観艦式リポート、いかがでしょうか。
いずもを筆頭とした各種護衛艦を間近に見ることや撮影ができ、しかも艦艇に丸一日乗れる!という、かなりマニア度の高いイベントが観艦式。
15日に2回めの予行が、そして18日には本番が開催されます。今から申し込みはできませんが、また3年後に開催されるはずなので、興味がある人はぜひ覚えておきましょう。総火演以上の申し込み倍率というウワサもありますが、次回平成30年度には「DDH-184 かが」が参加するのでは?といわれています。
陸自の総火演ほど知られていませんが、艦船好きのみならずミリタリーマニアにとって1度は見ておきたい注目のイベント、それが観艦式といえるでしょう。
[amazonjs asin=”B014HUPQKM” locale=”JP” title=”自衛艦ディテール写真集(3) 2015年 10 月号 雑誌: 世界の艦船 増刊”]