エアガンよりもモデルガンの方でよく行われるカスタマイズに「ブルーイング」という方法があります。
金属パーツやHW(ヘビーウェイト)樹脂を「塗装」ではなく「染め」によって着色するというもので、金属光沢をいかした独特の雰囲気のある仕上がりになります。
オールドガンに多い写真のような深みのあるブルーですね。
そしてトイガンのブルーイングは「手間がかかり難しい」といわれます。
・・・が、今回はなるべく手間をかけず簡単にできる「HW樹脂への簡易的なブルーイング」を試してみました。もちろん、手間ヒマと時間をかけて入念に仕上げた正統派のブルーイングとは比べるべくもありませんが、手軽に青黒い金属光沢を再現できてしまいます。
ちなみに、金色の「金属製モデルガン」を黒く染めることは法律で禁止されています。ご注意を。
さて。今回の素材はKSCのトカレフT33。
HW樹脂のガスブローバックハンドガン。HW樹脂の上にパーカー調のダークグレイで塗装されており、軍用銃ならではの仕上げになっています。
実際のT33にブルー仕上げがあったのかは分かりませんが、時代的にはおかしくないのでは?ということでやってみました!
なお、ブルーイングできる素材はHW樹脂、亜鉛合金、アルミ、鉄などで、普通のABS樹脂は染まりません。今回はHW樹脂製のスライドとフレームを染めます。
というわけで、まずは分解から。
フィールドストリップの状態を経て・・・
フレーム側から全パーツを取り外します。
シンプルなT33だけあって、問題なくサクサクと素っ裸にできました。
以下はフレーム側をサンプルに説明しますね。
まず表面の塗膜をはがします。
筆者は模型用研磨パッド(400番)と3Mのスポンジ研磨材(320~600相当)を使用しました。
全体をくまなくヤスってひと皮ムキましょう。
本来ならエッジがダレないように注意して磨きますが、今回はエッジを(ほんのちょっとだけ)丸めてみました。使い込んだブルー仕上げにするため、それに合わせて本体も使い込まれたように・・・という目論見です。
なお、油分の付着を防ぐために、写真のようなビニール手袋をはめて作業することをオススメします。
研磨パッドやスポンジ研磨材は曲面にもフィットするので、トリガーガード内側なども問題なく処理可能。
作業がある程度進んだら、マメに拭いて表面の状態を確認しましょう。
塗膜を剥がすのが目的ですが、微妙なヒケやキズを発見したら、さらに削るなどしてうまく処理して下さい。
塗膜除去と表面処理ができたフレーム。
本来のブルーイングであれば、2000番くらいまで使用して磨き上げていくのですが、今回は800番相当のスポンジ研磨材までにしてあります。
ただし、表面をこする作業はしっかりやっておきました。
これは硬い金属の平滑面でこすり、樹脂の表面をツルツルにならすというテクニック。こうするとブルー液でよく染まるのです。
平面は写真のようにドライバーの軸部を使うと便利ですが、先端部分で引っ掻いてキズをつけないように注意する必要があります。
曲面や奥まった場所はこれを使いました。
「PCのディスクドライブを強制的に開けるための針金」です(正式名称わかりません)。これで段差の奥までツルツルの平滑面に仕上げます。
すべって傷つけないように作業するのはかなり神経を使いますが、この作業が完成度を大きく左右するので手抜きはできません。
満足いくデキになったら脱脂を行います。
アルコールでサッと拭いておけばいいでしょう。樹脂を侵すパーツクリーナーやブレーキクリーナーはオススメできません。中性洗剤で水洗いしてもOKです。
ではいよいよブルーイング開始です。
使用したのはバーチウッドの「スーパーブルー」と「アルミニウムブラック」。
一般的にはHW樹脂の染めにはアルミニウムブラックが多用され、濃いブルーを目指す場合はこちらだけで十分です。
今回は「使い込んで薄くムラになったブルー」を目指すので2液を使い分けました。
今回はドブ漬けではなく塗り込みで染めます。
まずはアルミニウムブラックで染めていきましょう。
原液のままティッシュ(できれば化粧用のコットンがベスト)に染み込ませて塗りましょう。
塗りつけるとサッと茶色っぽく変色しますが、数秒して乾いたら再び塗って・・・というようにどんどん塗り込んでいきます。
最初は色ムラが出ますがムリに補修しなくても大丈夫です(現段階では)。
ひと通り塗りこんだら数分おいて表面をならします。
表面にかすかに発生したススを拭い取るため、スチールウールで力を入れずに「なでる」ように優しくこすります。
5分ほど放置して落ち着かせたら、同様にまたブルー液を塗ります。
2回め以降はスーパーブルーの方を塗り込みました。
アルミニウムブラックより染まり具合がマイルドなので、1回めの塗り込みで出たムラを活かしつつ、全体的に青く仕上げるためです。
先ほどと同様に、塗って数分置いたらスチールウールでこするという作業を繰り返します。スーパーブルーは4回ほど塗り重ねました。
この段階ではほとんどツヤ消しの表面ですが、反射部が微かに青く見えています。
このまま30分ほど放置して落ち着かせたら水洗いします。
柔らかいスポンジと中性洗剤でしっかり洗い、ブルー液の反応がこれ以上進まないように洗い流しましょう。
完全に乾燥したら磨き上げ大会の開幕です!
最初はシルバーリングなどを磨くための「金属磨きクロス」を使ってゴシゴシこすっていきます。すると徐々に平滑になってツヤが出て、同時にブルーが浮き出てきます。
ある程度磨いてツルツルにしたら超微粒子のコンパウンドでさらに研磨しましょう。
ハセガワのセラミックコンパウンドは粒子が細かくオススメ。
フェルトバフに染み込ませてリューターで仕上げていきます。
この時、あえて磨き模様を残したり、荒い部分を残したりと小ワザも入れ込みました。
もちろんリューターを使わず手磨きでも構いません。
また、エッジの部分が薄くなってHW樹脂のダークグレーが出ることもありますが、今回はあえてその状態にしてあります。
ひと通り磨いたらシリコンオイルを塗ってみましょう。
塗っては拭き取り・・・を数回繰り返すと、色味が変わって青がはっきりと浮き出てきます。
1時間ほど放置して染み込ませてから余分なシリコンオイルを拭き取って完成!
側面はあえてムラになるよう控えめ磨き、グリップの前後面やトリガーガードなどはツルツルの状態になるようアクセントを付けました。
スライド部も同様に染めましたが・・・
今回はフレームとスライドをあえて違う状態にしてみました。
組み上げた状態だとその差が分かるでしょうか?
スライドの方は下地の研磨を1500番+極細目のコンパウンドまでで仕上げ、アルミニウムブラックを使わずスーパーブルーだけ8回塗り重ねた状態です。
特に曲面のスライド上面はハッキリと青が浮き出た状態になりました。
スライドは鮮明なブルー、フレームはブルーがかったダークグレーという組み合わせに。
軍用銃らしく使い込まれた雰囲気は出せたと思います。
今思えば、樹脂グリップもテカテカのツヤを抑えた仕上がりにしてもよかったかも?
作業終了!
本来のブルーイングでは下地を鏡面に近いレベルまで磨き上げてから染めますが、これにはそれなりの技術が必要だったり、膨大な時間がかかったりします。
今回のやり方は下地処理の手間を大幅に省いた簡易ブルーイングともいえるもので、手間や時間はそれほどかかりません。今回の全作業は6時間ほどで完了しています。
加えて技術の差が出にくく、誰がやってもだいたい同じような仕上がりになるはず。
「一回ブルーイングやってみたいけど難しそうだなぁ」という人はぜひ参考にしてください。実際にチャレンジしてみると「そんなに難しくない!」と感じることうけあいです!
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