小ネタから裏話まで!「ジャンクハンター吉田のアクション映画再評価」~シルヴェスター・スタローン編 その3

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ジョン・ランボー役を射止めたスライことシルヴェスター・スタローンでしたが、『ランボー』の一作目は主演にも関わらずギャラは相当低かったようです。
実際スライに聞きましたが、貰えたギャラが少なすぎて忘れてしまっていたぐらいでしたからね。
しかし、映画が大ヒットしたことで脚本執筆で発生したインセンティブ契約が膨大な額面として返って来たからまったく問題なかったとのこと。
最初はマリオ・カサールから脚本を高額で買い取る話を持ちかけられていたのですが、目の前に出された好物のオカズには手を出さない主義は変わらず、スライはそれを頑なに断り続けたことで脚本料の高額なギャラをロイヤリティーとして受け取ることができたわけです。

『ランボー』の大ヒットからロッキー・バルボアに次ぐ新しいキャラクターが確立され、今ではスライ=ロッキー&ランボーのイメージが映画ファンには常識的に浸透しています。が、その裏にはマリオ・カサールとアンドリュー・G・ヴァイナという2人のプロデューサーの仕掛けがあったからこその成功も大きかったのです。
『ランボー』はカロルコ・ピクチャーズがハリウッドで勝負に出る最初の作品でもあったことから、相当な売り込みプロモーションをカンヌ国際映画祭で世界中から訪れるバイヤーへ振る舞いました。

「『ロッキー』のシルヴェスター・スタローン最新作!」と当初売るつもりで考えていたヴァイナに対し、カサールは「『ロッキー3』が控えているから他所の作品の宣伝を大きくする必要はない」とのことで、ロッキー=スライ売りは極力控える方向をとります。
カンヌ国際映画祭では残念ながら『ランボー』の完成は間に合わず、45分のフッテージのみをバイヤー向けに上映。
マーティン・スコセッシ監督作『タクシードライバー』以降の70年代中期から後期にかけて流行ったベトナム帰還兵物の作品はこの頃にはトーンダウンしてきており、
「話が暗すぎる」
「今更ベトナム帰還兵を中心に描く意味がよくわからない」
「映画化権をワーナーが手放すぐらいの作品だから完成しても大したことないのでは?」
フッテージを観たバイヤーたちも未完成だったことからかバイヤー向けにはあまり良い印象を与えられなかったといいます。
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しかしですね、日本だけは違ったんですよ。
東宝東和の買い付け担当の方は、スライのアクション映画を期待してフッテージを観終わる前に試写室を出て、早々にカロルコと契約を結びました。

『フォクシー・ブラウン』やパム・グリアーが好きだったカサールはプロデューサーのバズ・フェッシェンズに声をかけ、スライは『ナイトホークス』で一緒だった際、かなりのワガママを受け入れてくれたハーバード・ナナスを招き入れ、『ランボー』の製作予算を1500万ドルまで集めるべくプロデューサー陣営を固めます。
そもそもカサール&ヴァイナのカロルコ側とスライは、『勝利への脱出』で2人がプロデューサーで参画していた時に出会っていました。
カロルコそのものは2人が投資家として映画などへ出資して財を築き上げていた1976年に共同経営で設立。『ロッキー』を観て、反骨精神溢れるスライのファンになった2人はパラマウント・ピクチャーズが『勝利への脱出』でスライを主役で起用と決定した瞬間から出資を決めます。実はその前にピーター・メダック監督の心霊ホラー『チェンジリング』にも出資していて、スマッシュヒットから思わぬ収益が上がったことで、そのままの利益をスライが主役とならば・・・という流れもあったそうです。
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このように紆余曲折を経てスライが『ランボー』の主役となりましたが、最終的にカンヌ国際映画祭では、外から2人のプロデューサーを招聘したことで大きな政治力も働き、バイヤーたちは『ロッキー』のイメージしかないスライに対し次第に関心を抱き、その結果世界各国へ『ランボー』は見事高い値段で売れました。

ワーキングタイトルは『ランボー:ファースト・ブラッド』でしたが、日本や欧州ではわかりやすく主人公の名前だけ切り取って『ランボー』のタイトルにし、北米などの英語圏では『ファースト・ブラッド』で、1982年の秋から全米で公開が始まりました。

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ジャンクハンター吉田

ジャンクハンター吉田
書籍『ゲームになった映画たち』シリーズ(三才ブックス、マイクロマガジン)の著者であり、ゲーム・映画のコラムニストとして活動するかたわら、体を張ったフリーのジャーナリストとして数々の無茶ぶりなオーダーもこなす。殉職したらロボコップ計画へ自分の身体をドナーとして全て提供するつもり。

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