小ネタから裏話まで!「ジャンクハンター吉田のアクション映画再評価」~シルヴェスター・スタローン編 その1


「1980年代を代表するアクションスターとは?」
その答えはもちろん、スライことシルヴェスター・スタローンでしょう。
アーノルド・シュワルツェネッガーよりも先にアクションスターとしてのポジションを確立していたスライですが、当初は人柄の良さから幾多の裏切りに遭っていました。『ランボー』でのスタントなしでの生身のアクションが評価されるまで、『ロッキー』シリーズのヒットによるアメリカン・ドリームの体現者らしいスポットライトを浴びつつ、抱えていた闇も多かったのです。
そんなスライを数回に渡って知られざる部分を中心にキャッチアップしていきます。

スライ初のアクションは1975年に公開された『デス・レース2000年』
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B級ムービー界の帝王ロジャー・コーマン製作の最高に狂った近未来カーレース映画です。カルト人気の高い本作で「マシンガン・ジョー」なる悪党を演じたスライ。元々クルマが大好きだったことから殺人カーレースなる内容を知らないままオーディションを受け、ポール・バーテル監督も熱狂的なクルマ好きであったため意気投合し、出演が決定したそうです。

筆者は17、8年前にロサンゼルスでスライと1時間ほど会食したことがありますが、その際に『デス・レース2000年』の話も少々聞きました。記憶がうろ覚えなのですけども、スライは「あの作品は30万ドル程度の予算で撮る作品だったので、その予算の大半は改造車に費やしていたらしい。自分のギャラは確か1日拘束で1,000ドルぐらいだったような気がする」とのこと。もしかしたら500ドルといっていたかも・・・。

安いギャラではあったものの現場は楽しかったようで、本作の主役であり、日本人には『キル・ビル』でお馴染みのデヴィッド・キャラダインとも現場でクルマ話で盛り上がっていたとか。

スライ本人もマシンガン・ジョーというキャラクターを気に入っており、撮影時にはバーテル監督へキャラクター像の提案を積極的に行っていたそうです。

ちょうど『デス・レース2000年』のオーディションを受けるためにハリウッドへ出向くタイミングと重なり、交際中だったサーシャと結婚(最初の奥さん)。
1974年に公開された『ブルックリンの青春』で4人の主役のうちの1人を演じ、役者になって初めて5,000ドル近くの大金を手に入れます。税金などでいろいろ持って行かれて手元には3,500ドルほどしか残らなかったそうですが、それを元手に生まれ育ったニューヨークからロサンゼルスへ移住。
結婚前からサーシャの稼ぎで生計を立てていたスライでしたが、ロサンゼルスに住み始めたことでオーディションにも容易で受けられるわけで、手当たり次第に作品の内容関係なくヘッドショット(バストアップなモノクロ写真と経歴を記載したプロフィールのこと)を送りまくる絨毯爆撃。ニューヨーク時代に受けた数々のオーディションでは書類審査で落とされることも多かったのですが、ハリウッドでは面接まで到達することも多々あったそうです。

ニューヨーク時代は小さな映画に出演してもクレジットされることはほとんどなく、スライ自身の職歴は微妙な状態が続いてましたが、『デス・レース2000年』のオーディションを受けるとほぼ同時期にリチャード・フライシャー監督の奴隷牧場を描いたパラマウント・ピクチャーズ製作の問題作『マンディンゴ』の出演が決まります。
2日間の撮影に参加しましたがセリフがありつつもモブキャラで、スライが出演した部分はすべてカットされてしまいました。編集中の段階で出演シーン削除の電話が来た時の落胆っぷりは相当だったとか・・・。
その直後に『デス・レース2000年』の撮影に突入し、その怒りをマシンガン・ジョーへ投影させたようで、まさに『スライ 怒りの脱出』が本作だったというオチでした。

ジャンクハンター吉田

ジャンクハンター吉田
書籍『ゲームになった映画たち』シリーズ(三才ブックス、マイクロマガジン)の著者であり、ゲーム・映画のコラムニストとして活動するかたわら、体を張ったフリーのジャーナリストとして数々の無茶ぶりなオーダーもこなす。殉職したらロボコップ計画へ自分の身体をドナーとして全て提供するつもり。

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