「さばなび」でも紹介されていましたが、5月20~22日までの3日間、千葉市の幕張メッセで「第1回国際ドローン展」が開催されました。
ドローン(小型無人機)の展示は、日本航空宇宙工業会の主催による国際航空宇宙展、東京ビッグサイト主催による危機管理展といったイベントでありましたが、ドローンだけの展示会は今回が初となります。
国際ドローン展は民間向けのドローンを中心で、展示された大多数は空撮や測量、農薬散布といった民間用途のもの。
しかし、カナダのベンチャー企業であるエリヨン社は、軍用としても実績のある「スカイレンジャー」を出展していました。
カナダのエリヨン社が開発した偵察用ドローン「スカイレンジャー」
スカイレンジャーは最初から、軍隊や警察などの法執行機関で使用することを前提に開発された機体。最大瞬間風速25mでも飛行が可能で、摂氏-30~+50℃でも運用できるタフさをセールスポイントとしています。
また、同じサイズのドローンの飛行時間が30分程度なのに対し、スカイレンジャーは約50分間の飛行が可能とされています。
スカイレンジャーのコントロールはラジコンのようなプロポではなくタブレットを使います。飛行ルートの設定は簡単で、タブレット上の地図で、目標や飛行ルートを設定するだけで自動的に目標へ向けて飛行し、ホームボタンをクリックするだけで自動的に帰還することも可能。
スカイレンジャーのコントロール用タブレット
自律型ドローンは誘導に使われるGPSの電波が受信できないと、墜落したり制御不能になってしまうことも多いのですが、スカイレンジャーはGPSの電波が受信できなくなったり、バッテリーの容量が少なくなって飛行が困難な場合は、離陸地点に自動的に帰還する能力も備えています。
スカイレンジャーは4つのローターを展開した状態でも、全長1m弱の小型機ですが、30倍のズームカメラや赤外線カメラといった本格的なセンサーを搭載しています。
スカイレンジャーは既にサウジアラビアをはじめ、30ヵ国以上の国の軍隊や警察に採用されています。今回のドローン展では私服の自衛隊員の姿も数多く見受けられましたが、ほとんどがスカイレンジャーの展示されたブースに足を止め、担当者から熱心に話を聴いていました。エリヨン社は既に陸上自衛隊にスカイレンジャーを提案しているとのことで、近い将来陸上自衛隊の装備に加わるかもしれません。
このようなドローンを使ったら、サバゲの新たな戦術が生まれるかもしれませんが、スカイレンジャーのお値段は本体とコントローラー、カメラなどのセンサーや予備バッテリーなどを含めて2,000万円以上といいますから、ちょっと手の出せる代物ではありませんね。
ただ、ヨコヤマコーポレーションが出展したホビー用のドローン「ALIEN X-6 SYN-130C」のように、13,000円程度のドローンでも、搭載された200万画素のカメラで動画や静止画を撮影することができます。
「ALIEN X-6」の上位機種にあたる「Cicada」。1,600万画素のカメラを搭載し、GPS誘導により安定した飛行ができる
また、以前さばなびでも紹介されていましたが、ウェアラブルカメラのGoProがドローンに参入することを明らかにしています。こうした一般人にも手を出せるドローンを活用して、サバゲの新たな戦術を考えてみるのも面白いかもしれませんね。
ドローン展には約90機のドローンが出展されましたが、その中で最も注目を集めていたのが、自律制御システム研究所が出展した「高速長距離飛行型ドローンの試作機」でしょう。
アニメや特撮映画に登場するメカにしか見えないこのドローンは、ヘリコプター型ドローンの垂直離着陸能力と、固定翼機型ドローンの速度性能を両立させた、いわば「ドローン版オスプレイ」とでもいうべき機体です。
自律制御システム研究所が出展した高速長距離飛行型ドローンの試作機
まだ試作機の段階ですが、自律制御システム研究所はこのドローンの目標性能を、最大搭載量15kg、最大速度150km/h、最大飛行距離100kmに設定しています。
用途としては海上監視や火山活動の観測、そして軽貨物の輸送などを想定しているとのこと。
このほかにもドローン展には、セコムが開発した警備用ドローンや、MIKAWAYA21が試験を進めている、お年寄り向けのお買い物代行ドローンなどが展示され、ドローンのさまざまな可能性を来場者に示しました。
セコムが出展した警備用ドローン
ただ、ドローンにはさまざまな可能性がある反面、今年4月には微量の放射性物質を含んだ液体入りのボトルを携行したドローンが首相官邸の屋上で発見されるという事件が発生しました。また5月にはこれまでにもドローンで問題行動を起こしていた少年が浅草の三社祭を妨害したとして逮捕されるなどいくつかの問題が発生しています。
ドローンの普及に伴ってさまざまな問題が起こっているのは日本だけではなく、今年1~2月にかけてフランスのパリでは、大統領府やアメリカ大使館の上空などを正体不明のドローンが飛行する姿が目撃されて市民を不安に陥れたり、同じく1月にはアメリカのホワイトハウスの敷地内で発見されるという事件も起こっています。
どちらもテロなどではなく、後者に至っては酒に酔ってドローンで遊んでいたシークレットサービスの職員が、誤って墜落させたもの(!)と判明しましたが、警戒が厳重なホワイトハウスでドローンが飛行していたにもかかわらず、まったく発見されなかったという事実が、大きな衝撃を与えたことは事実です。
ドローンは超低空を飛行するため、レーダーで発見するのは困難です。有力な探知手段として期待されているのが、ドローンが飛行する時に発する音をキャッチして、接近してくる方角や距離などを測定するシステム。アメリカのドローンシールド社や、日本の沖電気工業などが実用化しています。
ただ、正体不明のドローンが首相官邸などに接近してくるのを探知しても、撃墜するため市街地で機関砲などを発射すると、流れ弾などによって無関係な人や建物などに被害を与える可能性が・・・。
このため現在ではレーザー兵器をドローン対策に活用することが検討されています。
出力50kw級のレーザー発射装置を搭載した装輪装甲車「ボクサー」
今年2月にUAEのアブダビで開催された兵器見本市「IDEX2015」には、ドイツのラインメタル社が開発した、出力50kw級のHEL(高エネルギーレーザー)を搭載した装輪装甲車「ボクサー」が出展されました。ラインメタル社はHELの用途として、ドローンの迎撃も想定しており、2013年10月に行われた試験では、実際に複数のドローンの撃墜に成功しています。
「ボクサー」に搭載されたレーザー発射装置
昭和38(1963)年から放送されたアニメ「鉄人28号」の主題歌に「いいもわるいもリモコン次第」というフレーズがありますが、ドローンも鉄人28号と同様、コントロールする人間次第で、利器にも凶器にもなります。
サバゲでドローンを使う場合も、他人の迷惑にならないよう、安全に十分注意して使っていただきたいと思います。
※写真はすべて著者撮影
[amazonjs asin=”4023314269″ locale=”JP” title=”ドローン・ビジネスの衝撃 小型無人飛行機が切り開く新たなマーケット”]