小ネタから裏話まで!「ジャンクハンター吉田のアクション映画再評価」~エディ・マーフィ編その4

前作の大ヒットを受けて、エディ・マーフィー本人が続編を直訴して製作が始まった『ビバリーヒルズ・コップ2』
当然、彼が立ち上げたプロダクションも絡みつつ、なんとパート2では原案にもタッチしました。

そんな『ビバヒル2』ですが、まず監督探しが難航し、キャストたちのスケジュール調整の兼ね合いも問題でした。
また、前作で劇伴を担当したハロルド・フォルターメイヤーが参加した『トップガン』が撮影真っ只中というタイミングで、トニー・スコット監督へドン・シンプソン(プロデューサー)はオファーを出します。
未完成状態でしたが『トップガン』の粗編を観たシンプソンは、「次の『ビバヒル』はスタイリッシュに! 『トップガン』のようなテレビCM出身監督が撮るとロサンゼルスがクールに見えるはず!」とのアイデアからスコット監督にお願いしたのです。結果、「続編撮影を引き受ける条件としては『トップガン』で知り合ったチームで参加できるのならば」と・・・。
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そしてトニー・スコット監督の右腕ともいえる撮影監督ジェフリー・L・キンボール&編集担当クリス・レベンソンは、前作『トップガン』の現場から意気投合し、『ビバヒル2』でも続けて一緒に仕事をします。これら2作品の現場での仕事ぶりから彼ら3人はその後も継続して作品を作り上げますが、プロデューサーのドン・シンプソンとジェリー・ブラッカイマーは、トニー・スコット監督が『トップガン』のメガヒットでもたらしたパラマウント・ピクチャーズへの貢献度を大変重視。スコット監督はプロデューサー陣含む重役たちからも特別待遇されるようになります。
もちろん、劇伴はハロルド・フォルターメイヤーが引き続き担当し、”アクセルのテーマ”と呼ばれているシンセサイザー音を使ったリズミカルなサウンドトラックも健在。

屈強かつ冷徹な美女のイメージでシナリオが描かれていたカーラ・フライ役は、オーディションを開くも中々見つからず難航していました。
女好きのドン・シンプソンは『ビバヒル』でエディ・マーフィーが主演を務める前に演じるはずだったシルヴェスター・スタローンの当時の嫁を『コブラ』で知り、スタローンへコンタクトします。スタローンは結局『コブラ』で夫婦初共演となった(『ロッキー4』の時はまだ交際中)ブリジット・ニールセンを喜んで送り出します。
当時『トップガン』は、全米で『コブラ』よりも1週間早く公開していたため、スタローンも鑑賞済だったことが功を奏したようです。

以前は親しかったが今は疎遠になってしまったにも関わらず、過去を水に流す男気溢れるスタローンに感謝したシンプソンは、『ランボー 怒りの脱出』のポスターを『ビバヒル2』劇中にて大きくフォーカさせたりと、プロデューサーらしい感謝の表現をしました。

なお、今回続編が決まり、最も撮影を楽しみにしていたのはローズウッド刑事役のジャッジ・ラインホルドだったとか。
前作の現場でエディ・マーフィーのコメディセンスの虜になってしまったラインホルドは、『ビバヒル2』撮影中もエディのトークで笑いまくってNGを連発。スコット監督は、元々ニヤケ顔のラインホルドだから仕方がないと判断し、本番中もニヤニヤしてしまう彼の表情にOKを出したそうです。

実は15年ほど前にハリウッドのインディーズ作品でキャスティングの仕事をしていた際、ラインホルドがオーディション会場へ現れたので話をしたことがありました。
その時に『ビバヒル2』が1番楽しい現場だったとか、エディのアドリブトークのせいでNG連発させられたなど、秘蔵エピソードを沢山聞けたのです。
中でも強烈だったのが、マカオのカジノを味わいたいと、バケーションで香港へ行ったドン・シンプソンがたまたま劇場公開されたばかりのジョン・ウー監督の『男たちの挽歌』を観てえらく感動し、急遽ローズウッド刑事のキャラクターを銃マニアに変更、クライマックスの銃撃戦ではシンプソンのいわれるがままにコートにサングラス、ダブルショットガンの容姿で挑むことになったとか。

『男たちの挽歌』は香港映画だったので他は誰も観ておらず、スコット監督でさえ疑問に思いながらクライマックスの撮影をしたそうです。つまり、『ビバヒル2』のローズウッド刑事はジョン・ウー監督へのオマージュ・・・というよりも『男たちの挽歌』へのリスペクト心が強くにじみ出ているプロデューサーのエゴが強く入っていたわけです。

そのドン・シンプソンならではの豪気で豪快な部分は『ビバヒル2』でフルスロットル! 『ビバヒル』シリーズではこの『2』が最も女性のモブキャラやエキストラを多く起用しています。
理由は女好きだからというのもあるのですが、ほぼ毎夜女性たちを招いてハーレムナイトなパーティー三昧を繰り返したかったからといわれています。
シンプソンとブラッカイマーだけではなく、『ビバヒル2』のスタッフは当然ドラッグをキメながらヨロシクしまくっていたそうで、『フラッシュダンス』『ビバリーヒルズ・コップ』『トップガン』と大ヒットを連発していたシンプソンに逆らえるパラマウントの役員もおらず、会社としても見て見ぬふりするしかなかったと。

そこで事件が発生。ただしスタローンに対してです。
夜な夜なパーティーを続けているうちに、スタローンの嫁のブリジット・ニールセンがトニー・スコット監督と浮気をしてしまいます。ラインホルドいわく、2人ともお酒を飲みすぎて酔っ払っての肉体関係が発端だったそうですが、その後も関係は何回か続いたそうです。
スタローンはアルコール依存性だった当時の嫁に疑心暗鬼で、旅客機のファーストクラスでたまたま隣同士で乗り合わせたニールセンと意気投合し(つまりナンパ)、宿泊先ホテル名を聞いたニールセンは、彼の部屋へ自身のセクシーな写真の裏に「会いたい」というメッセージと電話番号も記載して届けました。
そこからスタローンはさげまん地獄街道へ踏み込むのですが、ピュアな彼の性格上、マルチタスクでの交際はできず、最初の嫁であるサーシャと11年の結婚生活にピリオドを打ってしまいます。
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『ロッキー4』に出演させた後にニールセンと2度目の結婚をしたのですが、お酒を飲むと酒乱的変貌が見えるニールセンに対する不安は常に抱いており、スコット監督との肉体関係は気づいてなかったらしいで。結果としてヒット作に恵まれなくなったスタローンを踏み台にして、ニールセンから離婚を突きつけました。
一部ではスタローンから離婚を切り出したといわれていますが、それは彼の母親がニールセンは財産や名声目当てで接近してきたと感じており、結婚直後から離婚を促していたからだと思います。

なんだかエディ・マーフィーの話から随分離れてしまいましたが、次回『ビバヒル3』の舞台裏でこの項目の最後となります。

お楽しみに!

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ジャンクハンター吉田

ジャンクハンター吉田
書籍『ゲームになった映画たち』シリーズ(三才ブックス、マイクロマガジン)の著者であり、ゲーム・映画のコラムニストとして活動するかたわら、体を張ったフリーのジャーナリストとして数々の無茶ぶりなオーダーもこなす。殉職したらロボコップ計画へ自分の身体をドナーとして全て提供するつもり。

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