5月14~17日、静岡市で第54回静岡ホビーショーが開催されました。
今回も数多くの新製品が発表されましたが、個人的にはハセガワから発売が予定されている1/700スケールの海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」に注目しています。
ホビーショーで展示されたハセガワの1/700「いずも」
私は残念ながら別の取材があってホビーショーで「いずも」のキットの試作品を目にすることができなかったのですが、その代わり(?)に取材の一環で思いがけず、本物の「いずも」を見学するというチャンスに恵まれました。
今回の「いずも」の見学は、日本で初めて開催された防衛装備の展示会「MAST ASIA 2015」の横須賀見学ツアーという形で行われたもの。日本で開催されるとはいうものの、取材申請もすべて英語で行なわなければならず、この見学ツアーも“Yokosuka Ship Tour”としか書かれていませんでした。
このためそれほど大きな期待はしていなかったのですが、展示会場のパシフィコ横浜から、海上自衛隊横須賀基地へ向かうバスの中で、見学するフネが「いずも」だと知らされた時にはビックリしました。
私は今回初めて「いずも」を目にしたのですが、その第一印象はとにかく「デカい!」のひとことに尽きます。
艦首方向から見た「いずも」
同じヘリコプター護衛艦のひゅうが型を初めて目にした時にも同じ印象を受けましたが、「いずも」の大きさがもたらす存在感は、ひゅうが型のそれをはるかに上回っていると感じました。ちなみに「いずも」の全長は約248mですが、これは第二次世界大戦中にアメリカ海軍が運用した正規空母のヨークタウン級とほぼ同じです。
サイドランプ(艦への出入り口)から艦内に入って、最初に案内された多目的区画には、「いずも」と、「いずも」がその名を継承した旧日本海軍の装甲巡洋艦「出雲」が描かれた油絵が飾られていました。海上自衛隊が旧日本海軍から受け継いだ伝統を、いかに大切にしているかを改めて感じさせられました。
多目的室に飾られている「いずも」と「出雲」が描かれた油絵
この多目的区画は、島嶼防衛や大規模災害で陸海空三自衛隊が協力して任務にあたる際などに洋上の司令室として使われるため、床にはコンピュータを使用するためのコンセントなどが多数設けられています。
また、けが人が多数発生した場合には、臨時の医務室として使うため、そのスペースには手術用の照明などが、あらかじめ用意されていました。
多目的区画には臨時の医療室として使用するための手術用照明なども設置されている
多目的室で「いずも」についての説明を受けた後、私を含めたツアーの参加者は、ヘリコプターなどの航空機が発着艦する飛行甲板に案内されました。
写真を見ていただければおわかりいただけると思いますが、飛行甲板はとにかく広く、浮かんでいる護衛艦の上にいるという感じがまったくしません。
艦首方向から見た飛行甲板
「いずも」の甲板が異様に広く感じられるのは、その大きさもさることながら、従来の護衛艦が搭載していた、主砲やミサイル発射装置などの兵装が、ほとんどないことも影響しているのかもしれません。
ひゅうが型も主砲は装備していませんが、甲板上には埋め込み式の垂直発射型ミサイル発射装置が装備されていました。しかし「いずも」にはそれすらなく、兵装は対艦ミサイルや航空機などから自衛するための、短距離艦対空ミサイル“SeaRAM”の発射装置と20mm機関砲「ファランクス」を、各2基ずつ装備しているに過ぎません。
「いずも」の数少ない固定兵装の一つ“SeaRAM”艦対空ミサイルの発射装置
従来の護衛艦のような強力な兵装を持たない「いずも」にとって、最大の武器となるのが航空機搭載能力の高さです。
「いずも」の標準搭載機数は、SH-60J/K哨戒ヘリコプター7機、捜索救難ヘリコプター2機とされていますが、必要であれば最大14機のヘリコプターを搭載できます。
この大きさでたった14機?と思う人もいるかもしれません。
格納庫内に収容されていたSH-60K哨戒ヘリコプター
海上自衛隊はヘリコプターをすべて格納庫に収容することを前提としています。14機という搭載機数は格納庫内に収容した場合の最大搭載機数で、露天係留(飛行甲板に航空機をそのまま置くこと)であれば、さらに多くのヘリコプターを搭載できます。
なお「いずも」のサイドランプからは、車輌が自走しての乗降が可能となっており、陸上自衛隊の73式大型トラックであれば50輌が搭載できます。
飛行甲板を見学した後、我々は甲板と格納庫をつなぐエレベーターに乗って、格納庫へと案内されました。このエレベーターの乗降操作をしていたのは女性隊員でしたが、「いずも」にはひゅうが型と同様、女性隊員専用の居住区画が設けられています。
飛行甲板と格納庫をつなぐエレベーターの上から見た艦橋
「いずも」は2基のエレベーターを備えており、現在陸海空三自衛隊が運用しているすべてのヘリコプターはもちろん、陸上自衛隊が新たに導入するティルトローター機、V-22オスプレイも格納庫に収容が可能。
格納庫は長さ125m×幅21m、高さ7mとひゅうが型よりも大きく、MCH-101やCH-47J/JAのような大型機の整備も可能となっています。
また、格納庫内には万が一火災が発生した場合に備えて、防火シャッターで区切られており、また天井にはスプリンクラーが多数設置されていました。
格納庫内にはヘリコプターを牽引するための車輌のほか、格納庫内を移動するためのものと見られる自転車(!)も置かれていました。
格納庫内の移動に使われる(?)自転車
最新鋭護衛艦と自転車の組み合わせは、ちょっとユーモラスな気もしますが、広い格納庫内を迅速に移動して作業をするためには、うってつけの装備(?)といえるでしょう。
一通りの見学を終えた後、艦首から全体像を撮影するため、バスの発車を待ってもらって艦首の方向へと走ったのですが、なかなか艦首にはたどり着くことができず、当日が暑かったこともあって、到着時には汗だくになってしまいました。こんな経験をしたのは、今回が初めてです。
就役間もないフネのため、「いずも」は横須賀でしか見る機会がありませんが、5月24日に青森県のむつ市で行なわれた「マリンフェスタin大湊」に参加するなど、これからは横須賀以外でも目にする機会が増えていくと思います。
お近くに「いずも」が来る時はその大きさを実感していただきたくことをおススメいたします。
※護衛艦「いずも」の写真はすべて著者撮影
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