俗にいう「中華ガン」では、極まれにトンでもないものが発売されます。
クオリティが「お察し」だったり実射性能が「アレ」なことも多いですが、「よくもこんな◯◯を製品化しやがって!」というホメ言葉を耳にすることもチラホラ。
今回のレビューは(たぶん)そういったマニアックな、ちょっとゲテモノ系の中華電動ガン、AYの「スペクトラM4」です。
かつてファルコントーイから「スペクターSMG」としてガスガンが出ていましたが、今回のものは電動ガン。他にはないラインナップなのでオールドファンならずとも期待してしまいます。
そもそも、実銃のスペクトラ(スペクター、シュペクトラともいう)はイタリアのシテスが開発した1980年代のSMG。口径は9mmパラですが、一部40S&Wのモデルもあったそうです。
中身はストレートブローバックなのにクローズドボルトという変わった機構でデコッキングレバーを装備。初弾はハンマーダウンの状態からダブルアクションで発射できるそうです。
また、複々列弾倉を備え、4-2-1の給弾でマガジンの長さを抑えているのも特徴。
とはいえ、構造が斬新すぎたのか大規模な制式採用はほとんどなく、2000年代初頭には絶版になっています。
こんな「誰得」SMGの電動ガンがAYのスペクトラM4。
その中身が気になりませんか?
2014年の12月中旬に国内販売が開始されたこのスペクトラM4、今回はこれを紹介しますので、興味ある人はぜひご覧下さい!
●外観全景
ぱっと見るとスペクトラですが、どことなく漂う「コレじゃない感」・・・原因はスコーピオンSMGのようなフォールディングストックがないのと、フォアグリップが長い・・・あたりでしょうか。
とにかく、アッパーもロワーも全部樹脂製なので、めちゃくちゃ軽いです(モナカ構造じゃありません)。電動ガンとしてはサイズや重さがMP5Kとだいたい同じくらいです。
ストックがないと上部が凹んだバレルジャケット部分がちょっと貧弱に見えますね。
ただ、これでも分かる人が見れば「あぁ、スペクトラ(スペクター)だね!」となるはず。独特すぎるシルエットなので、その点は安心です。
そして何よりめちゃくちゃ軽い!
このサイズと重さでver.3メカボックス内蔵という、いかにもサバゲ向きという印象が! 疲れた時や荷物を減らしたい時などにピッタリな電動ガンではないでしょうか。
●AY スペクトラM4のスペック
全長:360mm
重さ:1.49kg(マガジン込み)
インナーバレル:130mm
装弾数:50発
初速:93.5m/s(0.2g弾の10発平均)
価格:18,000円前後
※今回は国内で流通している商品を購入しました。
では各部分を見ていきます。
フロントまわり
バレルジャケットはスチールのプレス・・・ではなく厚手の樹脂製。真っ黒なABSではなく、ファイバーの入ったサクサク削れるダークグレーの素材でした。
バレルジャケット部からはフォアグリップへの配線が見えるので、気になる人は熱収縮チューブなどを被せて目立たなくしてあげましょう。
マズル
何か下に寄っているマズルキャップ(?)も樹脂製。今回のサンプルでは写真のように接着剤がズビっとはみ出していました。
また、先端部にスキマがあってインナーバレルがカタカタしています。
うーむ、ここだけ見ても不安を覚えるレベル・・・。
フロントサイト
アルミ製で調整できません。
それなのに、四スミをネジでガッチリ固定されています(バレルジャケットへダイレクトにネジ込み)。
フォアグリップ
おそらく外観上もっとも気になるであろうポイントがここ。ミニバッテリーを収納するためか、実銃の1.5倍くらい長いです。
確かに天地左右とも握りやすい寸法ですが、さすがにこれは・・・と思えてなりません。
NEOXのPEQ用リポバッテリーならスッポリ入り、これなら長さは半分で済みます。技術と度胸のある人は切って詰めてもいいかもしれません。
サイドレイル
エジェクションポート側には、7スロットのダイキャスト製レイルがダイレクトにネジ止めされています。
寸法的にはほんのちょっと細いようで、アクセサリーを取り付けてもカタカタするものがありました。
一般的にはライトマウント用でしょうが、反対側にもあればサイドオフセットマウントでダットサイトなどが取り付けられたのに、と思います。
コッキングハンドル
レシーバー上部にスライド式のコッキングハンドル(コッキングレバー)があります。
ここも微妙にカタカタしていました。
後方に引くとエジェクションポートがちょっとだけ(1cmくらい)ズレて開きます。
中には透明樹脂のHOPチャンバーと、見慣れない位置にHOP調整用ダイヤルが。指の太い人は回せないくらい狭い奥にあるので要注意です。
レシーバー
側面はこんな感じ。
実銃でいうでデコッキングレバーがセミ/フルの切り替えのセレクターレバーになっています。
1911のセフティレバーのように扱いやすく、サバゲではとっさに撃ち分けも可能。
この操作性はかなりヨイと思いました。
反対側はこうなってます。
セレクターはダミーで、その前方の扇型のレバーはセフティ。
動作はかなり固く、トリガーフィンガーでカチカチとON/OFF・・・というわけにはいきません。
マガジンキャッチ
トリガーガード内側のボタンを押してキャッチを解除します。
リアサイト
簡単なノッチ式で非調整タイプで、サイトピクチャーは可もなく不可もなくといったところ。
全体がラッチになっており、フレーム後端のキャップを押さえています。
左右のスプリングロックは本来フォールディングストックの固定用なので、スプリングで動きますが完全にダミーになっています。
マガジン
スペクトラならではの極太マガジンはスプリング給弾で装弾数50発。付属のマニュアルには100発と書いてありますが、50発+α しか入りませんでした。
9mm弾仕様なのに前後幅より左右幅が広く、マガジンポーチを選ぶかもしれません。
ちなみにこれ単体で120gとかなり軽量です。
●分解方法と内部調整
ハッキリいって内部調整は必須。箱出しそのままで使うと程なく壊れると思います。というわけで、まずは分解方法から。
後端のキャップを外す
単にリアサイトで押さえてハマっているだけなのですぐ取れます。
スイベルピンを抜く
反対側がマイナスネジになっているので外します。
ロワー前端のピンを抜く
上側の細いピンを叩いて抜きましょう。
下のピンはマガジンキャッチ用なので抜かなくても大丈夫です。
ロックパーツを外してロワーを抜く
ここがスペクトラ分解の一番の難所。
アッパー後端左右にある四角いボタン(ロックボタン)を左右同時に押し、ロワー(グリップ部+メカボ)を後方ナナメ下にズラして抜きます。
ロックボタンは目いっぱい押しても抜けない可能性が高いので、そんな時はアッパーレシーバーの左右のスキマにマイナスドライバーを突っ込んで反らせて広げてから抜きます(反らせすぎて割らないように注意!)。
フォアグリップを外す
ロワーを抜くと配線が引っかかるので、あらかじめフォアグリップを外しておきましょう。底ブタを開けて長い六角レンチで奥のネジを2本外せばスポンと取れます。
ちなみにネジは樹脂製のバレルジャケットに直接ネジ込まれているので、何度か取り外しを行うとネジ山がバカになります。要注意。
簡易分解
ロワーを抜くとインナーバレル+HOPチャンバーが抜けます。
ここまでバラせれば、後は内部調整なりチューニングなりが可能に。
HOPチャンバー
クリア樹脂製で精度はちょっとキビしいものがありました。
一見してオリジナルっぽいですが、よくよく見比べてみると・・・
ver.2のM4用によく似ています、というか、上部を削れば使えそうです。
HOP調整ダイヤルが1つだけなので、撃っているとドンドン緩みそうな気がします。
メカボックス
ご覧のとおりver.3ベースのカスタマイズ品。
ロワーから取り出すにはセレクター部にあるピンとグリップ底部のネジを外します。
中を開けると・・・・
各パーツのデキは決して悪くありませんが、組み付けとグリスアップはかなりテキトーでした。例えば、メカボックスにはバリがいっぱい、シムはスカスカ、ベアリングは全部ポロポロ取れる、グリスはてんこ盛りなどなど。
シリンダーはスリット入りで、スプリングはかなり強力なもので、穴あきシリンダーと130mmのインナーバレルで初速93~94m/sを叩き出すといえば、だいたい想像できる強さだと思います。
これだとメカボックスが割れそうなのでスプリングだけは何とかしたいところ。
さて、気になる専用パーツは・・・
シリンダーヘッドは下に偏心したオリジナル品です。
ということはタペットも・・・
はい、ver.3用ながらノズル部が低いオリジナル。
もし折れたら、ver.3用を加工して流用できる・・・かな?
ノズルはOリングの入った真鍮製です。
なお、銃口部のマズルキャップ(?)はこのピンで固定されています。
左右どちらでも叩くか押すかで抜けます。
というわけで、今回行ったの調整は以下のとおり。
●モーターを東京マルイの1000(ショート)に交換
●HOPパッキンを東京マルイ純正品に交換
●スプリングはSHSのM90に交換
●メカボックスは清掃してグリスアップ
●シムはかなりいい加減なのでしっかりと調整
●バッテリー端子をミニ2P化
●インナーバレル先端にテープを巻いて固定できるようにする
メカボックス自体は歪みや反りがなく、バリ取りだけでそれなりのものになったのが幸いでした。
バッテリーをつないでトリガーを引くと、軽やかにノイズなくポコポコと動作!
これは期待できるかも!
●実射確認
というわけで、さっそくバッテリーとBB弾を入れて撃ってみました!
気になる結果はというと・・・
あれー、かなり散っていますね。
確かにサイトがテキトーすぎて狙って撃つようにはできていませんが、それでもこれはイマイチなレベルです。
やっぱりインナーバレルとマズル部の固定をもっとしっかりやらないとダメなんでしょうか。
うーむ。
そして、初速は何と69m/s!
スプリングを弱くしたのでスリット入りシリンダーの影響がモロに出てしまったのでしょう。とりあえずは「インドア用」と考えればこれでも構いませんが、そのうちフルサイズシリンダーや重めのピストンヘッドに交換して初速アップを狙う予定。このバレル長なら80m/sも出れば十分かなと考えています。
●まとめ
半年ほど前には「SHSがスペクトラを発売する」というウワサがあったのですが、実際にリリースされたのはこのAYという(あまり耳にしない)メーカーでした。ギアやピストンはそれなりのものが組まれていたので、パーツに関してはSHS製が使われているのかもしれません。
確かに機種選択のマニアックさはかなりのものですが、ハッキリいって中身は残念なところ。ひと昔前の中華ガンそのもので、メカボックスを開けられる人でないと購入はオススメできません。
しかし実売価格が安いとはいえ、こんなゲテモノ銃(ホメ言葉)をわざわざ買うような人はそれなりのコダワリや愛情があるはず。使える状態まで持っていく手間はかかりますが、「スペクトラのためならガンバれる!」という人はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
筆者はもちろん気に入って(自腹で)購入したので、今回の調整だけでは飽きたらず、ちょっとしたカスタマイズも考えています。
改めて紹介する予定なので、気になる人は期待してお待ちください。
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