いよいよ『心に残った銃撃名場面ベストテン』第2位まで来ました。
前回の『ゴッドファーザー』同様、幼少時代から父親よりトラヴィスのような生き方を帝王学として学ばされ、現在よろしくない大人になってしまった。且つ、危険思想極まりないトラウマを植えつけられた・・・『タクシードライバー』を第2位に挙げました。
[amazonjs asin=”B009D9UJN2″ locale=”JP” title=”タクシードライバー Blu-ray”]
この作品も『ゴッドファーザー』に負けず100回以上鑑賞しております。実際にリアルタイムでロードショー中、何度も父親に映画館へ連れて行かれ(こっちとしては同じ映画が苦痛でたまらなかった)、さらにその後、名画座での上映があるたびに再び何度も連れて行かれ、完璧にトラヴィス脳へとブレインウォッシュされてしまいました。
そんな『タクシードライバー』ですが、名場面と言えば売春宿へトラヴィスがカチコミしに行くシーンでしょう。
S&Wの44マグナムと小型リボルバー(S&W M60)でクズ共を皆殺しにするところは痛快極まりないです。なんといっても売春宿へ入った瞬間、44マグナムの破壊力を見せつけるかの如く男の右手を吹き飛ばすシーン。
当時はまだ映画における銃撃シーンといえば、サム・ペキンパーのリアルさに衝撃を受けていた時代で、そんな最中、マーティン・スコセッシ監督が演出した『タクシードライバー』のクライマックス。銃で手の平から指までハデに吹き飛ばすヴァイオレンス描写を観客へ見せつけます。映画では人体部位欠損シーンを初めて挿入したエポック・メイキングではないでしょうか。
さらに売春宿の2階へ登り、M65フィールドジャケットの袖から自作の飛び出しスリーブガンを用い、油断していた相手に何発も撃ち込んで射殺。ここまでの一連の流れは本作最大の見せ場であり、『タクシードライバー』を語る上では必要不可欠の要素です。 そんな筆者も6歳の頃、駄菓子屋で購入した銀玉鉄砲を改造して割り箸や輪ゴムなどで繋ぎ合わせた簡易スリーブガンを作成しましたが、今考えてみると何度も『タクシードライバー』観させていた父親の危険思想タップリな英才教育の賜物だったように思えてなりません。
さすがにモヒカンにはしませんでしたが坊主頭にして気合を入れた記憶はあります。ちなみに、劇中のロバート・デ・ニーロのモヒカンはディック・スミスによる完成度の高いカツラです。
『タクシードライバー』では、バーナード・ハーマンが奏でるジャズテイストをタップリ入れたサックスによる哀愁漂うサウンドトラックも大好きですが、本作が遺作でもあるのは感慨深いです。ハーマンはアルフレッド・ヒッチコック監督のチームで曲を作っていましたがケンカしてしまい、他の多くの監督とも衝突したことで、ハリウッドのメジャースタジオから干されてしまいました。欧州映画を中心に作曲しつつ、ハリウッドへ戻ってきてはヒッチコックを神と崇めるブライアン・デ・パルマ監督のインディペンデント映画『悪魔のシスター』で低予算ホラーの仕事も始めます。
その後はラリー・コーエン監督の『悪魔の赤ちゃん』、同じくデ・パルマ監督の『愛のメモリー』と来て、亡くなる直前にコロンビア映画の『タクシードライバー』で名曲を作り上げました。
スコセッシ監督はデ・パルマ監督からハーマンを紹介してもらい、その後、スティーヴン・スピルバーグ監督がスコセッシ監督に「ハーマンを紹介して欲しい」と頼み、『ジョーズ』の次にサウンドトラックの依頼をしようとしていました。ここでハーマンはスピルバーグへ「なぜ、俺に『ジョーズ』の曲を依頼しなかった? ジョン・ウイリアムズよりも遥かに恐ろしい曲を作ってやったのに!」とタンカを切ったのは知る人ぞ知るところです。
また、『タクシードライバー』の編集はジョージ・ルーカス監督の最初の奥さんマーシアも担当しており(確か『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』の時に、彼女の不倫がバレてジョージは怒って即離婚)、さらにノンクレジットではありますがスピルバーグ監督も一緒に編集協力していた関係だったのです。
最後にこれまたどうでもいいネタですが、『タクシードライバー』の地上波オンエア版はDVDやBlu-rayに未収録のシーンがいろいろと挿入されています。本来は114分ですが、テレビ用として本来の長さからカットしまくって90分強の尺で構成されたバージョンが存在しています。
こちらにはガンホルスターを銃の密売人からプレゼントされるシーン、ジョディ・フォスターのところへ行った際、携帯している銃をボディガードに奪われるシーン、ハーヴェイ・カイテルとの会話シーンがもっと長いなど、北米で放送された地上波オンエア版と日本で放送されたオンエア版が存在しています。共に編集が違うし(同じシーンでもカメラアングルが違ったりしているらしい)、劇場版で収録されなかった映像もそれぞれ違っていたりします。
ウワサではフィルムとしてはもう存在していないらしいのですが、テレビ局の倉庫にはビデオテープが眠っていると思います。ぜひ再放送をお願いしたい!
ジャンクハンター吉田
http://www.junkhunteryoshida.com/
書籍『ゲームになった映画たち』シリーズの著者であり、ゲーム・映画のコラムニスト扱いされている肥満児(非卍)かつ、体を張ったフリーのジャーナリスト。リブート版新生『ロボコップ』Blu-ray&DVD発売中。殉職したらロボコップ計画へ自分の身体をドナーとして全て提供するつもりな今年44歳のダメ人間。