小ネタから裏話まで!「ジャンクハンター吉田のアクション映画再評価」~『スカーフェイス』編

『心に残った銃撃名場面ベストテン』もいよいよ第4位です。
実はここから1位までは同列に近い順位なのですが、今回の4位は『スカーフェイス』
1932年公開のハワード・ホークス監督の『暗黒街の顔役』を、ブライアン・デ・パルマ監督が現代風にリメイクし、アル・パチーノを主役にして1983年に公開。ヴァイオレンス満載、かつFワードも満載な大傑作映画です。

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クライマックスでパチーノ演ずるトニー・モンタナが、M203付きのM16を屋敷でぶっぱなすという銃撃戦にシビれたのは中学時代。その原体験は忘れられません。
UZIやMAC10といったサブマシンガン、FALなどの自動小銃も登場する屋内での激しい銃撃戦は、パチーノ主演作品で誰もがベストワンとうなずける素晴らしいシーンでしょう。仲間も味方も全員死んで孤立したトニーがコカインでハイになっている状態で、撃たれても撃たれても立ち上がって迎撃するのは胸が熱くなります。
ウエポン男子にしかこのカッコ良さはわからないかもしれませんが、ぜひウエポン女子にも”成り上がり”を実現したトニー・モンタナのクールな生き方にシンパシーを感じて欲しいところです。別にコカインを密売してお金を稼げってワケじゃないですよ。
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スーツを着たトニーが屋敷内にてM16を持っているだけでゾクゾクしてくるのですが、筆者はもしかしたらスーツ+ライフルというのが萌えポイントなのかもしれません。
『ヒート』でロサンゼルスのダウンタウン市街地での銃撃戦もそうだったので、もしかしたらそういうフェティシズムが内面にあるような気がしてきました。

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イラスト:やまもとわかな

脚本を書いた無名時代のオリバー・ストーンは、この時期が人生最大のドラッグ中毒だったそうで、それが功を奏してか胸熱な内容になったのは説明するまでもありません。その後『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』の脚本を担当したり、自分の原体験を元にした脚本を売り込みまくって監督+脚本でアカデミー賞を獲得した『プラトーン』へと出世街道を登り詰めるオリバーそのものが、トニー・モンタナとオーバーラップしてしまう生き方なのです。いや~、ハリウッドって面白いですね。実力主義なところが素晴らしい。

なお、主人公のトニー・モンタナ役には当初ジェフ・ブリッジスが決まっていたのですが、オーディションではなく、ユニバーサル・ピクチャーズの選出でした。が、デ・パルマ監督はカメラテストでジェフに難色を示し、クランクイン目前にスタジオ側の役員たちとの大喧嘩へ発展してしまいます。デ・パルマはトニー役はアル・パチーノというイメージが強かったこともあり、最終的に彼のスケジュールを押さえた上でジェフに降板してもらうという舞台裏で完成した現場だったそうです。

私は何度観ても飽きない大好きな映画は、好き過ぎてオールタイムベストには入れない主義なのですが、この『スカーフェイス』もまさにそう。「生涯のお気に入りの名画に順位を付けるなんて失礼すぎる」という勝手な持論なのですけど。

そんな本作、実はゲーム版が2006年に海外のみで発売されていました。
映画のクライマックスでトニーの背後から静かに接近する殺し屋がいましたが、それも返り討ちにして一網打尽に・・・つまり“IF”という「もしもトニーが背後から殺されなかったらその後は?」から始まる続編的なゲームだったのです。
屋敷を押収されて無一文から始まるトニーは、再び成り上がるべく愛するマイアミでコカインビジネスを再開。マネーロンダリングしつつ、裏稼業で名声と金を得ていくというステキ展開です。ゲーム内では名声値を上げなくてはならないので車を奪ったり銃を構えたりするだけで警察に目をつけられる、押収された自分の屋敷を奪い返さねばならない、地位と名誉を高めていく・・・そして最後はライバルであるソーサに復讐という内容なのですが、残念ながら日本では未発売。
日本の家庭用ゲーム倫理審査機構である(天下り的な)CEROがユーザーの自由を蝕むことで、『スカーフェイス』だけではなく、ドラッグが関わるゲームの多くが未発売なのです。本当クソですねぇ。

ジャンクハンター吉田
http://www.junkhunteryoshida.com/
書籍『ゲームになった映画たち』シリーズの著者であり、ゲーム・映画のコラムニスト扱いされている肥満児(非卍)かつ、体を張ったフリーのジャーナリスト。リブート版新生『ロボコップ』Blu-ray&DVD発売中。殉職したらロボコップ計画へ自分の身体をドナーとして全て提供するつもりな今年44歳のダメ人間。

ジャンクハンター吉田

ジャンクハンター吉田
書籍『ゲームになった映画たち』シリーズ(三才ブックス、マイクロマガジン)の著者であり、ゲーム・映画のコラムニストとして活動するかたわら、体を張ったフリーのジャーナリストとして数々の無茶ぶりなオーダーもこなす。殉職したらロボコップ計画へ自分の身体をドナーとして全て提供するつもり。

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