去年あたりからちょくちょく耳にするようになった「電動ガンの電子制御化」。
ノーマルの電動ガンはトリガーでスライドスイッチをON/OFFしますが、これを電気的に何とかしようというチューニングです。以前からFET化という手はありましたが、これはさらに進めて、モーター逆転による電磁ブレーキやマイコンチップによるバーストショットもやってしまおうというもの。例えばトレポンのスイッチ基板のようなものです。
そのメリットはいくつかありますが、まず何といっても「トリガーレスポンスの向上」があります。コッキング→発射というプロセスにかかる時間は変わりませんが、トリガーリーチが短くできるのでモーターが動き出すまでの体感時間が短縮します。
また、コッキングから発射までの時間を短くできる高電圧バッテリーを使ってもピストンクラッシュを(ほとんど)回避できます。
そしてフルオートは「1発1発の動作をマイコンで区切っている」ので、ものすごい速さでセミオートを繰り返すことになります。つまり回路の方で3バーストを設定できれば、確実に3発をカウントして発射できる点も魅力。
もちろんいい話ばかりじゃなく欠点もあります(後述)。
そんな電子制御基板で世界的に広く普及しているのがAIRSOFT SYSTEMSの「ASCU」。パッケージにはmade in EUとありますがブルガリアのメーカーで、同社のASCUの現行品が「Gen.3」。ver2用とver3用があります。
今回は「ASCU Gen.3 for ver2」の組み込みを紹介します。組み込むのは何度か記事で実験台になっている筆者私物のAR。マルイのメカボックスなら(ほぼ)ボルトオンで組み込めるようです。
なお、今回は付属のチャンバー(ASHU)は使用していません。ASHUを組み込むと擬似ボルトストップ機能などが使えるようになりますが。チャンバーのデキがとってもアレなのであまりオススメできないからです。
メインユニット
Gen3のメインユニットは2分割モノ。前作のGen2では配線途中にある別体基板でしたが、Gen3に進化してトリガースイッチと差し替えるメインユニットにすべての機能が集約されました。
この2枚の基板の間をトリガーが動いてトリガースイッチのON/OFFを行うしくみになっています。
テープが見苦しいですがこれが全景。基本的に差し替えて組み込むのでハンダ付けなどは不要です。
付属部品
セレクタープレート、カットオフレバー、タペットディレイヤー、トリガーエクステンション、絶縁シールとなっています。これらのパーツは基本的に全部使う方向で作業しましょう。
もう1つ。シリコングリス(放熱グリス)も同梱。
基板のFETをメカボックスに密着させて放熱に利用します。
PCを組んだことのある人にはおなじみですね。
では作業に入ります。
まずはメカボックスを取り出しましょう。
そしてメカボを開けてシリンダーやギアを全部取り外します。ついでに清掃やグリスアップしておくといいですね。
スイッチユニットを外し、ここにASCUを入れます。写真ではセフティカバースイッチが残っていますがこれも不要。ASCUを入れるとセレクターがSAFEでもトリガーはロックされません(引けるけど通電しない)。
では下基板を上側から下へスライドさせるようにしてパチンとはめ込みましょう。
固定ネジとカットオフレバーも装着します。ネジを締めすぎると基板が反るのでほどほどに。
この時、写真で示したピンを削っておくと上基板がすんなりハマると思います(上基板のFETが当たるため)。
削る量はこれくらいでOK。元に戻す気がサラサラなければピンを根元から切り取っちゃっても大丈夫です。
また、下基板のダボ穴もちょっとだけ水平方向に広げておくのがオススメ。
マルイのメカボならこの加工でジャストな位置にぴったり収まるはずです。
取りつけ後、反対側から見ると小型スイッチが2つ見えます。
この押し具合でセレクターのセミオートとフルオートを検知します。
ナナメに押すと簡単に壊れてしまうので、すぐにセレクタープレートを取りつけましょう。
スイッチを押さえつつ滑り込ませます。ノーマルにあるカットオフレバーとつながるスプリングは不要です。
メカボのもう片側にも若干加工があります。
突起が残っていると上基板が密着しにくいのでまっ平らに削り落としておくと安心です。
また写真の位置に付属の絶縁シールを貼りますが、これはビニールテープでもセロテープでもOKです。
トリガーにも付属のエクステンションを貼ります。
きちんと脱脂してから接着しましょう。耐衝撃瞬着やエポキシ接着剤がオススメです。
この部品はトリガーリーチをツメるのと、トリガースイッチへの当たりが柔らかくなる効果があります。
上基板まで組み込んだ状態がこれ。
付属の配線はかなり太いシリコンケーブル(18AWG)なので、テフロン線に交換して長さもピッタリに合わせてあります。
ここで放熱グリスの出番です。
FETの金属部(銀色の部分)に適量塗布します。
だいたい、1か所に米粒1〜2つ分でしょうか。つけすぎると飛び散ったりするので慎重に。
これでメカボックスを閉じましょう。
ノーマルの配線はちょっと太いので、上側のメカボックスにある「配線経路にあるケーブル押さえの突起」も削った方がいいかもしれません。
また、取説では逆転防止ラッチは不要とのことですが、射撃後にギアが戻る「ニュルン」という感触がイヤなので今回は入れておきました。逆転防止ラッチがあってもASCUの動作には影響しません。
さてさて。
ここまでカタチになったらメカボックスをロワーに入れ、グリップとモーターを取りつけてテストしましょう。
必ずセレクターがSAFEの位置でバッテリーを接続。バッテリーの種類(電圧)は自動で判断します。
そのまま3秒待つと「プッ」とモーターが鳴るので、音が聞こえたらセレクターをSEMIにしてトリガーを引いてみましょう。小気味よく動作したらOKです。
そのままFULLに入れると、トリガーをちょっと引けば3バースト、長く引くとフルオートというハイブリッドモードです。これも確認しておいて下さい。
問題なく動作すれば組み込みは成功です。
もしキレイに動かない場合はセレクタープレートの動き方(スイッチの押し方)をよくチェックしましょう。問題があるとすれば大体ココなのでセレクタープレートとスイッチの当たり具合を削って調整したり、セレクター裏の楕円のパーツとの当たりを微調整します。
もしセフティに入れた状態で動作してしまう時はメカボックスの前後位置(ロワー後端のゴムシートの有無や厚さ)を確認して下さい。
なお、取り外した以下のパーツが不要になります。
捨てちゃうのはもったいないので、何かの時のために保管しておきましょう。
セッティングと動作設定
では元通りに組み上げて初期設定をしましょう。
テストで行ったように、必ずSAFEの位置でバッテリーを接続します。
射撃モードの設定はバッテリーをつないで「プッ」という前に(3秒以内)セレクターをFULLに入れてトリガーを1回引きます。「プ--ッ」と長い音がすればプログラムモードに突入です。
その後、短音が数秒おきに1~4回鳴るので、希望するモードの回数が鳴ったところでトリガーを引きます。
ビープ音1回 モード1 セミオート+3バースト→フルオート(デフォルト)
ビープ音2回 モード2 セミオート+フルオート
ビープ音3回 モード3 セミオート+3バースト
ビープ音4回 モード4 セミオート+セミオート
トリガーを引いて「プーッ、プッ」と2回音がすれば設定は完了。新たにプログラムモードに入って再設定するまでこのモードは記憶されるので、最初だけ設定するわけです。
ちなみに、FULLではなくSEMIの位置から入るプログラムモードもありますが、これは付属チャンバーのASHUを使う時の設定です。今回のようにASHUを組み込まなければ不要なので、このモードに入らないよう注意。間違って突入してしまったら焦らずバッテリーを外せば設定前の状態に戻れます。
とりあえず、バッテリーをつなぐ時は、必ずSAFEになっていることを確認して下さい。
このASCUを導入するメリットは、冒頭で述べたようにトリガーレスポンスの向上が最も体感できます。特に11.1Vのリポバッテリーを使うと、トリガーを引いた瞬間にピストンが動いてバスッ!っとBB弾を発射。セミオート運用がメインの人にはとても有効です。トリガーリーチを加工して短縮すれば、バカみたいなセミ連射も可能に!
ちなみに11.1Vで3バーストを撃つと、ものすごいサイクルで撃ち出された3発がショットガンみたいに固まって飛んでいきます。3バーストでもフルオートでも1発ごとにモーターを電磁ブレーキで停止させるのでピストンクラッシュの心配はありません。電子制御化の大きなメリットですね。
逆にASCUの欠点はモーターを酷使すること。撃つたびに逆転させて強引にブレーキをかけるのでモーターの寿命はノーマルの半分以下です。とはいえ、筆者の場合は15,000発ほど使えました。手頃な価格で精度の高いマルイの1000モーターを15,000~20,000発ごとに交換すればそれほど問題ないでしょう。古いモーターからブラシを移植する方法もありますが、ピニオンギアの減りを考えると新品交換が手軽で確実です。
また、セミオートで鬼のように連射しているとグリップが熱を持つのがわかります。モーターが発熱するほど負荷がかかっているわけですね。
もう1点、バッテリーの消費が増える点も要注意。
なにせモーター強制停止させる分、2倍近く電気を食うのです。バッファーチューブ内に小型のリポを収めている場合はバッテリー交換のタイミングに注意しましょう。
多少の欠点はありますが、快適なセミオートを体験すると十分お釣りがくるレベル。そう、ASCUを組み込んでフルオートで撃ちまくる人はあまりいないでしょうから、セミオートが中心の運用であれば発射弾数もかなり抑えられると思います。
国内では一部のショップやヤフオク!などで入手できますし、アジア地区総代理店である香港のREDWOLF AirSoftに海外通販でオーダーするのもありです。
とにかく、今後ますます広がっていくであろう電子制御化ですが、そのメリットとデメリットを体験するには、シンプルで安定して動作するASCUがオススメ。今回のようにマルイのメカボならほぼ無加工で導入できるので興味がある人はぜひお試し下さい。
AIRSOFT SYSTEM
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