現代的なボルトアクションライフルとして人気のレミントン・ディフェンスのMSR。これをモデルアップしたのがARESの「MS700」で、外観は「かなりいい感じ」とエアガンレビューで紹介しました。
増設オプションレイルやアルミ製のハンドガードなど、発展性のある構造はいかにも現代風。実際、フォールディングストックを含めた操作性はとてもよく、旧態依然としたM700と比べると雲泥の差です。
しかし、エアガンレビューでも紹介したとおり、MS700の中身は非常に残念というか、ぶっちゃけかなりヒドイものでした。安くはない金額でせっかく買ったので、これはなんとかしなければ!というわけで、今回はMS700の調整というか、普通に使えるレベルまでイジる方法を紹介します。同社のMS338も同じ手順で対応できるはずなので参考にどうぞ。
多少の予算は必要ですが、これで何とかサバゲで使えるようになれば・・・。
◎本体の分解
何はなくともまず分解しなければなりません。
アルミ+亜鉛合金の「MSTシャシー」は、4本のボルトで機関部と接続されています。
下面に2本、前から後方に向けての2本を外せば、機関部がスポッと取れます。
まずはこの状態にしましょう。
続いてシリンダーを引っ張り出すには、トリガーユニットのセットピンを抜く必要があります。
国内正規品は本体に専用ツールが付属しているはず。
先端が3mmネジになっているので、これをネジ穴に差し込んで回し、左右に揺らしながら引き抜きます。
もしツールがなければ長い3mm径のボルトをねじ込んでラジオペンチで引っ張りましょう。
ちなみに、付属ツールがあれば本体を一切バラさないでも外からシリンダーを抜けます。これは便利!
そしてシリンダーが抜ければ一段落。ここからさらなる分解と調整を行います。
バレル部、シリンダー、レシーバー部とそれぞれ紹介していきますよ。
◎機関部+バレル(チャンバー)
トリガーユニット
トリガーユニットは下から2本のプラスネジで止まっています。ただ、前方のネジはセットピンを抜かないと外せません。やや細めのドライバーを差し込んで回しましょう。
トリガー内部はこんな感じ。デフォルトのグリスを洗浄し、トリガーシアとトリガーの接触部を磨きました(写真は洗浄前)。トリガーが左右にグラグラする場合は、電動ガン用のシムで解消できます(ちょうど3mmの軸です)。
また、トリガーシアとトリガーのスプリングが硬いので、これをソフトなものに交換するのもいいでしょう(PDIの「かるバネ」は長さが全然違うので使えませんでした)。交換したい人はジャンクボックスをあさって下さい。
ピストンシアは亜鉛合金なので、スチールピストンを使うと磨耗が気になるかもしれません。
左側にあるプレート(裏側にスプリングがあり)を取り外すと、マガジンセフティが除去可能。
ただ、MS700は給弾チューブがあるので、カラ撃ちのつもりでも本体に残っていたBB弾を発射してしまうことがあります。マガジンセフティを外す場合は必要以上に注意しましょう。
ハンドガード
上部レイル後方の2本のネジを抜けば、レイルとつながったハンドガードが前方へ抜けます。
アッパーレシーバー(?)とレイルに間にあるスペーサーに注意して、バレルやハイダーをキズ付けないよう慎重に抜きましょう。
給弾チューブ
アッパーレシーバーとバレルにまたがる給弾チューブは、後方2本、前方1本のネジで下方向に取れます。この時、後方ネジの後ろにあるBB弾ストッパーのスプリングがポロッと落ちるのでなくさないように!
アウターバレル
アウターバレルはアッパーレシーバーの前方に挟まれていますが、ネジはかなりきつく締め込まれて固定されています。六角穴をナメないように注意して緩めて下さい。
締め込んでも若干ガタが出そうだったので、アルミテープを2~3周巻き付けてちょっとだけ太くしてみました。
ネジを締めすぎてアッパーレシーバーを割るトラブルも防止できますし、バレル部とレシーバー部のガタも(ある程度)防げます。また、もし組み上げた状態でアウターバレルが偏っていたら、ここでだいたい補正できるでしょう(逆にここでしか補正できない)。
余裕があればアッパーとバレルの位置を合わせてからドリルで穴を開けてピンやイモネジを打ち込んでおくとズレが防げます。
また、アウターバレルとアッパーレシーバーの間には、ボルト保持用の樹脂リングを挟みますが、もしボルトの動作が引っかかったり重いようなら、このリングの内径を(ほんのちょっとだけ)削って広げましょう。
コッキング時のシリンダーはこのリングからいったん抜けるので、押しこむ時にシリンダーがスムーズに入っていくようにテーパー気味にしておくといいです。
カッターの刃を立ててカンナのように薄く削ぐと簡単に加工できます。
HOPチャンバー
アウターバレル下部の皿ネジと上部のHOP調整用イモネジを抜くと取り出せるチャンバーはダイキャスト製。あまり精度はよくない印象です。
実射性能を上げるなら。まずはここを何とかしたいですね。
分解したらいきなりチャンバーパッキンがこれです、あちゃー。
どうやらノズル先端がチャンバーに当たり、削られたダイキャストのカスのようです。チャンバー自体が左右にちょっと寄っているのかな?
パッキン自体もシリコンゴム製でちょっとだけバリが出ていました。
まずチャンバーはノズルが当たりにくいようテーパー状に削り込みを入れました。
15mmの球状回転砥石で大まかに削り、半丸ヤスリやスポンジヤスリで滑らかに仕上げます。これでアタリはだいぶ解消されたはずですが・・・。
チャンバーパッキンと押しゴムはさくっと交換。
PDIの「ダブルホールドチャンバーパッキン」とマルイの「電動ガン用押しゴム」。柔らかいパッキンとやや固めの押しゴムでちょうどよくなるはずです。
また、チャンバーパッキンをバレルに差し込んだらシールテープを巻いて気密を上げておくと、バレルのガタが減って気密もアップしますが、やや集弾が散ることもあります。ノーマルのVSRがここからエアを意図的に抜いているのは集弾性アップのためかもしれません。
なお、インナーバレルは特に曲がりもなくセンターもだいたい出ていたのでそのまま使用。もし交換するのなら付属のバレルは460mmですが430mmのバレルでも問題ありません。
追記:KM製の430mmバレルに交換したところ弾道がかなり安定。この際、インナーバレルにビニールテープを軽く巻いてガタをほとんど解消してみました。
◎シリンダー
ノーマルシリンダーを活かす場合
ノーマルのシリンダーはアルミ製。耐久性に不安があり、コッキング時に曲げたり凹ませてしまう可能性があります。また、ハイパワースプリングを使いながらも流路を絞って無理矢理パワーダウンさせているので、その点も注意して調整しましょう。
ピストンは樹脂製ですが、中のスプリングはM140相当とバカみたいに強力。そりゃあコッキングが重いワケですよ。
ピストン自体はそこそこのデキだと思います。
シリンダーヘッドにオリフィスが仕込まれてM140スプリングのパワーを落としています。逆にいえば、これを抜くだけで初速が150m/sくらい出てしまうことに(香港仕様がこの状態)。そこでオリフィスを抜いてスプリングを国内で買えるものに交換しましょう。
スプリングはM100だと規制値をオーバーするかもしれません。そしてセッティングが決まったらシリンダーヘッドは接着剤で固定しておくと、発射の衝撃でネジ山をナメて壊れる心配が少なくなります。
ちなみに、ノーマルのピストン・スプリングガイドに使えるスプリングは「ノーマル径(細径)」ですよ。
社外シリンダーに交換する場合(推奨)
手頃なスチールシリンダーセットとして、写真左のMAPLE LEAF製 「VSR Cylinder UPgrad KIT」を使用しました(価格は約80ドル)。負圧式のアルミピストンとベアリング付きのスプリングガイドもセットされていてお買い得です。
ただし、これも付属のスプリングがM150相当なので、ライラクスのM90スプリングに交換。コッキングが劇的に軽くなり、初速は95m/s(G&G・0.2gバイオ弾)に落ち着きました。
追記:アルミピストンは初速が上がりやすいのと、亜鉛製のピストンシアの磨耗が早いのが問題。また、ピストンシアは専用品でバラ売りがないので、結局VSR用のノーマルピストン(エアブレーキ棒付きの白いやつ)に交換しました。
シリンダー前端部はコッキングのたびに樹脂リングに押し込まれることになるので、念のため角を面取りします。金属ヤスリでコリコリやりましょう。
ノズル先端や途中の段の部分ももうちょっと角を落としておくと、コッキングの最後の押し込みがスムーズになります。
また、シリンダー外径がノーマルよりわずかに太いらしく、樹脂製のボルト保持用リングの内側をちょっと削りました。これでばっちりとスムーズに動くようになったのでOKです。
予算のある人は、PDIから「ARES AW338・MS338用シリンダーセット」が各種出ているのでこれに交換するとお手軽。ちょっと高いですが何も考えずにポン付けでき、PDIのバキュームピストンなら命中率アップにすごく効くはずです。
レシーバー部
ここでやっておきたいのはマグウェルの内側を削ること。できれば購入したら最初にマガジンを入れる前に処理しておきましょう。ヤスリでゴリゴリ削るなり、セラミックスクレイパーを押し当てて削るなりお好きなようにどうぞ。
ストック
回転基部の固定ピンはピンポンチで下から叩いて抜きます。外すとこのストックが信じられないほど重くてビックリするかもしれません。
回転基部の上下にドーナツ状に切り出した0.3mmプラ板を挟んで組み直したところ、気になるガタはほぼ解消できました。が、これでも完璧には取れません。これで納得できない人はステンレス製のシムを使うか、ピンを打ち込んで固定するしかないでしょう。
下面のレイルにはモノポッドとして、AK用のフォールディングフォアグリップを付けてみました。ここはモノポッド用のレイルなので、ぜひそれっぽいパーツを付けたいところです。
◎まとめ
ここまでの調整と部品交換で、初速は0.2g弾で95±0.5m/sと安定しました。
(VSRノーマルピストンに交換したら92m/s±0.3m/sになりました)
また、集弾性もこのような結果に。
中央の黒円は約40mmで、ほぼこの中に収まりました。さすがVSR互換!
しかし、屋外で撃ってみたところ、30m先から若干弾道が左右にバラけ始める弾道に。とりあえず30m先のマンターゲットを外しません。
遠距離の散りはインナーバレルを精度のよい物に交換すれば収まりそうです。国産ならPDIの05バレルかKMのTNバレルあたりでしょうか。あるいはマルイのノーマルバレルもオススメです。
追記:KM製のTNバレル(VSR/ARES用430mm)に交換したところ、目論見通り30m以降の散りが大幅に減少しました。0.25g弾で40mヘッドショットも(ほぼ)いけます!
ただ、この段階においてもシリンダーノズル先端で削られた金属のカスがチャンバーパッキンに付着しています(ほんの僅かですが)。もうしばらく慣らせばこれも解消すると思うのですが、できれば社外品で高精度なチャンバーが欲しいところです。
こんな感じで一段落。
手間もお金もかかりますが、MS700でバシバシ狙撃したい!という人には必須の調整を紹介しました。
おそらく、今回の調整を全部ばっちりこなしても、精度面ではノーマルのVSRに及ばないでしょう。それでも長くて重いMS700でがんばるんだ!という男気あふれる人は、ぜひ参考にして下さい!
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