この映画の一番のときめきポイントを上げるなら、実の祖父であるゼロ戦パイロット・宮部久蔵の人物像につきます。
宮部は決して雄弁ではないけど、数少ない言葉と行動で人の心をつかむのです。
そして“臆病者”と陰口をたたかれながらも、操縦技術はエースパイロット級で、仲間の命を誰よりも尊び、家族を愛する男。ヒーローとして文句なしですね。
また、主役の周辺の人々もクセはありつつも、絶妙に男気を感じるナイスガイたちばかり。
ちなみに同じ百田尚樹さんの小説『海賊と呼ばれた男』にしても、『ボックス』にしても、男が惚れ込むいい男たちが描かれているので、あじのあるナイスガイに会いたければ、百田作品はオススメです。
ちょっと脱線したので、映画の話に戻りましょう。
今作で、宮部久蔵を演じたのは、V6の岡田准一さん。
格闘技や武術など複数のインストラクター資格を持っていることはよく知られていますが、そのストイックなイメージと、寡黙だけど行動力がある役柄にドンピシャでした。
「元気が出るテレビ」のジャニーズ予備校で選ばれた、あのかわいらしかった岡田くんが、すっかり凄みの出せる俳優になっていて、お父さん的にはうれしい限りです(笑)。
ちなみに作品では、寡黙な宮部が周囲の人間たちにいい言葉を随所でポツリポツリと漏らします。
被弾し燃料も尽きた部下が自爆をしようとした際に引き留めるも結果的に海に不時着して行方不明になり、自爆させなかった判断は間違いだ!と詰め寄る別の部下に対して
自爆は確実に死ぬ。
生きるための最善の努力をすべきなんだ!
“生”にこだわる宮部になぜ生きることにこだわるのかと部下が尋ねた時
私、1人が死んでも戦局は変わりません。
でも妻と娘の人生は私が死んでしまうことで変わってしまいます。
学徒出陣で特攻する若者たちに
あなたは生きてこの国の未来のために頑張るべきだ!
彼らは戦争が終わった後の日本のために生き延びる人間だったんだ!
などなど、胸を打つ言葉が無数に出てきます。
その辺を堪能するのもこの映画の楽しみと言えます。
ちなみにミリタリー的なアプローチをすると、
宮部久蔵はもちろん架空の人物ですが、戦歴などは史実に合わせた設定になっており、
劇場で売られていた公式パンフレットによれば、
1934年 海軍横須賀海兵団に入団
1941年 空母「赤城」の乗員として三菱二一型で真珠湾攻撃に参加
1942年 同乗員として同機でミッドウェー海戦に参加
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ラバウルに着任・ガダルカナル攻撃に参加
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1945年 筑波海軍航空隊で予備士官の空戦訓練を担当
鹿屋基地に赴任し、特攻の直掩機に搭乗零戦(中島二一型)にて特攻出撃 南西諸島沖で戦死。享年26
となっています。
歴代の愛機をまとめると、
1941年初夏~1942年6月 三菱二一型(灰緑色)/真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦
1942年夏 三菱二一型(灰緑色)/ラバウル前期
1943年秋 中島二一型(緑まだら)/ラバウル後期
1945年春 中島二一型(濃緑色)/筑波海軍航空隊
1945年5~6月 中島五二型(濃緑色)/鹿屋基地
1945年5~6月 中島二一型(濃緑色)/鹿屋基地
このような流れです。
ちなみに中島五二型は、所沢航空発祥記念館で先だって公開されていた零戦と同型&同色です。
劇中で使われたエンジン音は、展示されていた実機からサンプリングされたと所沢航空発祥記念館で説明されていました。
空戦シーンに関しては、迫力はありましたが、コックピットから見える外の景色が合成っぽさがありありと出ていたのがやや残念です。