いやぁ、奥深い映画でした。
私の勝手な先入観ながら、ハリウッド映画ってどこか勧善懲悪というか、主役サイドに100%肩入れしたくなるような作りをしている印象がありますが、この映画は全然違いました。
簡単な善悪の区分けはせずに、もっと見ている人に考えさせる感じの映画です。
王道なハリウッド映画なら、悪の海賊=私腹を肥やすためにしている強欲な人間として描かれているのでしょうが、この映画では、海賊として登場する人々は、ソマリアで失業中の元漁師たち。地元の権力者に上納金を払うために、武装した海賊グループの中堅幹部たちによって集められた超末端の人々で、貧困でとても困っている人たちなのです。
だから仮に大金をせしめても、彼らが手にするのはわずかな報酬と、わずかな名誉。
法と危険をおかして、海賊をしても、得たものの大半は、権力者の懐へと流れていくのです。
海賊行為自体は決して、許される行為ではないのですが、海賊たちにどこか同情してしまい、単純に悪者として見ることができないのです。
劇中のシーンで、
「どうして海賊なんかするんだ? 他にできることがあったはずだ」
とフィリップス船長が、海賊のリーダー・ムセに語りかけると、
「アメリカだったら見つかっただろうな」
と返すのが、実に重いです。
おそらく海賊をしなければ最低限の食事も手に入らないし、あからさまに断ろうものなら、自分のみならず家族まで殺されかねない空気が、映画の序盤にあったりしたので、その言葉の重みがドシンときます。
ちなみに海賊役の4名は、一般公募で集めたアメリカ在住のソマリア系若者たちだそうです。
みんないい演技しているんですよね。
楽しい気分になる映画とはいいがたいのですが、示唆に富んだいい映画です。
2時間を超える作品ですが、それを感じさせないテンポがあります。
ちなみに、この映画に出てくるSEALs隊員は、監督であるポール・グリーングラスのリアリティへのこだわりから、隊長役をのぞいた一般隊員たちは、みな元SEALsのようです(情報ソース:公式パンフレット)。
銃の扱い、着こなし、体と、確かにただ者ではない感じがありました。
また終盤の駆逐艦2隻、小型空母1隻、ヘリを交えた救出作戦のシーンかなりしびれます。
全体を通してはミリタリー分は少なめではありますが、ポイント、ポイントでミリ好きも気になる描写があって、さらにストーリーも引き込まれるものがあるので、オススメです!
公式サイト:http://www.captainphillips.jp
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