物語は、航海に出発する前のアメリカから始まる。
何気なく交わされるフィップス船長とその妻の会話。
仕事のこと、そして子供たちのことが話される。
しみじみとフィリップス船長が、「俺らの時代は、真面目に働いてさえいれば、船長にもなれた」「息子たちの時代は全く別の時代。激しい競争社会だ。だから授業をたまにサボってしまう息子が心配だ」的なことを言っているのが何とも心にささる。この日本でもそう感じている、50代、60代は多いはず。
そして港に着いたところから物語は本格的に動き始める。
フィリップス船長が乗り込むのは、オマーンからケニアへの援助物資を運ぶ貨物船・マークス・アラバマ号。その航海中には、当時も既に多数の海賊被害が出ていたソマリア沖を通らなければならなかった。
ちなみに海賊というと、「パイレール・オブ・カ○ビアン」や、「ワ○ピース」のイメージが強くて、どこか牧歌的で、カッコいいイメージを持っている人もいるかもしれないが、リアルな海賊は全然違う。ボロボロのAKを持ち、服装もきわめて簡素。そしてみなガリガリに痩せ、血走った目で、いけない葉っぱを噛みながら、暴力をちらつかせてフィリップス船長に金を要求してくるのだ。
のちにこうした海賊たちの造形が何を意味しているのかは明らかになるが、それは後ほど解説しよう。
問題のソマリア沖に着くと、マークス・アラバマ号は、フィリップス船長の機転と乗組員たちのがんばりで1度は海賊船をやり過ごすものの、結局は占拠されてしまう。
海賊とフィリップス船長の息詰る心理戦は見応え十分。
果たして、フィリップス船長はうまくこの危機を脱することができるのだろうか?
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*3ページ目以降はネタバレ的な要素も含まれてくるので観賞後にお楽しみください