8月になると毎年放送されるのが戦争もののドラマとドキュメンタリー。今年はNHK BSプレミアムで8月3日に放送された「零戦~搭乗員たちが見つめた太平洋戦争~前編」に注目が集まった(後編は8月10日J放送)。
日本の戦闘機といえば零戦(れいせん)だが、零戦が活躍したのは空母機動部隊が健在だった戦争中期まで、中期以降はアメリカ軍の防空能力が向上し、零戦は旧式化。苦戦を強いられるようになり、末期は特攻機となっていった。
これは海軍の話。第二次世界大戦時、日本には空軍は存在せず、それぞれ海軍航空隊と陸軍航空隊に分かれて戦っていた。2系統で航空機を設計、生産していたので、いろいろな航空機が作られ、さらに多数の試作機が存在している混沌たる状態だった。
それらの試作機が登場して「if」の闘いを描いたのが、滝沢聖峰の得意とする戦記マンガ。それも戦争末期の対B-29との防空戦闘こそが真骨頂。防空戦闘なので華々しい戦果をあげる痛快なストーリーではなく、苦渋に耐えながら戦うストーリーがお好みなら、最新刊の短編集『黒い戦闘機』を一読されたし。
滝沢聖峰のデビュー作から、最近の作品まで作者が選んだ9本に新作の「黒い戦闘機」を加えた10本を収録。コンビニ本なので、これで390円。滝沢聖峰の作品を初めて読む人にはかなりお得だし、すでに滝沢聖峰の読んでいる人には「どっかで読んだよ、コレ」ってことになるが、各作品に対する作者のコメントもあるので、新作も含めて“お布施”してもいいだろう。
滝沢聖峰の単行本はコンビニ本化されることが多いので、買ってから気がつく、いつものパターンである。
注目作品はデビュー作の「キ-108帰還改セズ」。少しばかりホラーSFの要素が入った滝沢聖峰らしい作品。女性キャラもリニューアルされた『東京物語』のように目が大きくなく、切れ長の目にはリアリティがある。
もうひとつが「審査部独立戦闘隊」。日本の空でB-29と戦うFw190、フォッケウルフのストーリー。当時、福生基地にあったFw190に独自開発の液冷エンジンを搭載して、B-29の迎撃にあたるというifの極み。日の丸を描いたFw190に心躍ること必至。
8月に読んでおきたい1冊である。
滝沢聖峰Webサイト
http://www.takizawaseiho.com/index.html
「黒い戦闘機」
滝沢聖峰著
朝日新聞出版
定価 390円(税込)
発売日 2013年7月26日
B6判 290ページ
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